自家がんワクチン療法
自家がんワクチン療法 個人情報保護方針 お問い合わせ サイトマップ
自家がんワクチン療法

ドクター通信
ドクター通信 from セルメディシン アーカイブ

一般向けトピックス 2008年分は → こちらです
一般向けトピックス 2007年分は → こちらです
一般向けトピックス 2006年分は → こちらです
一般向けトピックス 2005年分は → こちらです
一般向けトピックス 2004年分は → こちらです
一般向けトピックス 2003年分は → こちらです
一般向けトピックス 2002年分は → こちらです
自家がんワクチンについて ネットテレビ でみるなら → こちらです

       
   
ご注意とお願い

 以下の記事は、セルメディシン株式会社の研究者が集めた話題を、がんワクチン療法に興味ある専門家のために提供しているものです。慎重に記述はしておりますが、筆者の嗜好、誤解等が混入している可能性がありますことを、あらかじめご了承願います。

       最新号はメール配信しております。受信ご希望の方は → メールで申し込み をどうぞ。
       2007年およびそれ以前の分について、購読をご希望の方は → メールで申し込み 願います。
       Dr.通信 from セルメディシン 2009年分  → こちらです No.180以降があります
                      (No.163 09.01.05 から No.179 09.05.26 までは重複しています)
  No.

179


 
09.05.26
ソラフェニブの適用が肝がんに拡大
     
 腫瘍細胞増殖と腫瘍血管新生の両者をターゲットとする分子標的薬ソラフェニブ(商品名ネクサバール)は、本邦では既に腎がんにたいして国の承認を得て市場化されていますが、この5月21日に肝細胞がんにも適用を拡大できるように、厚労省の認可を獲得しました。

 弊社では、一般に分子標的薬はその高い特異的作用メカニズムから、理論上、自家がんワクチンと併用しても問題ないという方針をとってきております。今後、肝がん治療においても、ソラフェニブと自家がんワクチンの同時併用も臨床現場では起こり得るものと予想されます。

 しかし、分子標的薬は、ときに強い副作用を表すことがあります。ソラフェニブにおいても、「急性肺障害、間質性肺炎があらわれることがあるので、呼吸困難、発熱、咳嗽等の臨床症状を十分に観察し、異常が認められた場合には速やかに胸部X線検査等を実施すること」
  → http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0508-4h.pdf
との注意喚起がなされています。

 また、ネクサバール錠の副作用収集状況一覧(速報)も公開されています。
  → http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0508-4h.pdf

 他の分子標的薬、例えば腎癌に使用されるスニチニブ(商品名スーテント)でも、「白血球減少(85.2%)、好中球減少(82.7%)、貧血(58.0%)があらわれることがある」との重大な副作用情報が添付文書にあり、上記の一般論が適用できない場合もあります。

 これらの情報に十分注意の上、自家がんワクチンとの併用を行う際には、できれば、末梢血リンパ球数が1000ヶ/mm^3を割り込まないような分子標的薬の投与状況下で、併用をお願い申し上げます。

  No.

178


 
09.05.18
アメリカ癌学会(AACR2009)の話題から-その3
       
 今年のアメリカ癌学会(AACR2009)はコロラド州デンバーにて4月18日から22日まで開催されました。

 以下、その中からがん免疫に関係する話題を前回と前々回に続けてお送りします。

 マクロファージには、がん細胞の殺傷効果がある一方で、腫瘍形成の促進作用があることが従来から知られていましたが、通常型のマクロファージ免疫反応サプレッサー型に分別できることが最近知られてきていて、前者がM1、後者がM2と分類されています。

 今回、AACRに出たポスター発表では、Yingらが、すでにM1とM2型マクロファージの役割の違いについて、確定的に書いていました(1)。すなわち、

「Macrophages exhibit a classical, or M1 phenotype, that have the ability to destroy invading pathogens and cancer cells. In contrast, macrophages with the alternative, or M2 phenotype, can promote cancer progression by producing interleukin-10 (IL-10), matrix metalloproteinase 9 (MMP9), and other pro-tumorigenic chemokines. Tumor associated macrophages (TAMs) were shown to display a M2 phenotype and the accumulation of TAMs at tumor sites has been shown to correlate with poor prognosis in various types of cancer.」

 ヒトM1マクロファージは、末梢血単核球分画にGM-CSFを、M2マクロファージはIL4 + IL13を添加して72時間培養し誘導しており、遺伝子発現パターンが明瞭に異なることを示していました。

 一方、シンポジウムで講演したCoussensによれば(2)、肺癌マウスモデルで、CD4+ Tが腫瘍内へのmacrophage infiltrationをコントロールしている、immature macrophageのmaturationとphenotypeはTh1, Th2のサイトカインの影響を受け、それぞれM1, M2型になるという話でした。

 マウスから一歩進め、この話をヒトがんに外挿するときに、アイルランドの乳癌データを引用していました。ヒト乳癌では、「CD4 density low, CD8 high, CD68 low」のグループが、low highそれぞれ逆の「CD4 density high, CD8 low, CD68 high」グループに比べてOSが長く(p=0.005)、生命予後のpredictorになっているということです。この場合、CD68がマク
ロファージのマーカーになっています。

 マクロファージの腫瘍内浸潤は、必ずしも喜ぶべきものではないようです。今後、がん免疫療法分野では、「M2型マクロファージをどうコントロールするか」は、Th1とそれに続くCTLの誘導、Tregの抑制、と同様に重要課題となってきました。

REFERENCES

1. AACR2009 abst.#4137 CD11b+ peripheral blood mononuclear cells with induced M1 and M2 phenotypes demonstrate significantly different gene expression profiles. Chi Ying, Joseph Washburn, James MacDonald, Kenneth J. Pienta. University of Michigan Comprehensive Cancer Center, Ann Arbor, MI.

2. AACR2009 4/21 Symposia
Inflammation and Cancer: Mechanisms Regulationg Pro-tumor Immunity
-- Pulmonary metastasis potentiated by CD4+ T lymphocytes and M2 macrophages. Lisa M. Coussens, Univ. California Comprehensive Cancer Center, San Francisco, CA

  No.

177


 
09.05.14
アメリカ癌学会(AACR2009)の話題から-その2
       
 今年のアメリカ癌学会(AACR2009)はコロラド州デンバーにて4月18日から22日まで開催されました。

 以下、その中からがん免疫に関係する話題を前回に続けてお送りします。

 ワクチンと化療の併用効果があるという総説を書いたHodgeのグループからの発表がありました(1)。今回は、化療後のリンパ球回復期に、ワクチン投与をした場合をマウスでテスト、Tregも減るかをみたものでした。マウスにyeast-CEA vaccineを投与、データは確かに2桁Tregを下げています。また「(b) cisplatin plus vinorelbine combined with
heat-killed recombinant yeast-CEA vaccine (i) is superior to either modality alone at reducing tumor burden and (ii)
increases vaccine mediated antigen-specific T-cell responses.」と結論していましたが、マウスの生存カーブのデータは結構苦しい状態でした。

 Paluckaらは(2)、NY-ESO-1-specific T regsを発見(Vence et al. PNAS 104, 20884-9; 2007)、10人のメラノーマ症例でlow dose Cytoxan administration (300 mg/m2 iv)でこの変化を追い、2例でIL-10 分泌の減少とTreg減少を見いだしていましたが、逆に4例ではIL-10とTregの増加がでていました。low dose Cytoxanが一定の効果を示さないのはこの
ためではないかとディスカスしています。

 4月20日のmeet-the-Expert Sessionでは(3)、Imiquimod(樹状細胞やマクロファージなどに発現しているToll-like receptor 7に直接結合し、シグナルを伝えることによって、タイプ1インターフェロンを誘導し自然免疫を活性化する。表在型基底細胞癌(BCC)に有効とされ、欧米ではアルダラRクリームとして販売)を開発しているグループから、Biomarker研究の現状に関する講演がありました。
 
  多数の論文をずらりと並べた上の結論は、「Biomarkerの論文群は、まだ十分信頼できる状態にない。Biomarkerの決定には、PFS, OSと対比してmultiple markerをみるべきだ、multivariate analysis, Hazard ratioの計算が必要だ」というものでした。

 要するに、ものすごい量の臨床試験データを蓄積しないと、信頼できるBiomarkerは策定できないということです。地味なこの作業に耐えられる研究室は日本ではあるでしょうか。
 
REFERENCES

1.AACR2009 abst.#363 Chemotherapy can enhance the therapeutic potential of vaccine-mediated immunotherapy. Sofia R. Gameiro1, Jorge Caballero1, Jack Higgins1, Amanda Boehm1, Alex Franzusoff2, Jeffrey Schlom1, James Hodge1. 1Laboratory of Tumor Immunology and Biology, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, National Institutes of Health, Bethesda, MD; 2GlobeImmune, Inc., Louisville, CO.

2.AACR2009 abst.#714 Melanoma antigen specific Tregs and immune response to vaccination with dendritic cells. Anna Karolina Palucka, Joseph Fay, Jacques Banchereau, Hideki Ueno. Baylor Inst. for Immunology Research, Dallas, TX.

3. AACR2009 Meet-the-Expert Session, Immunologic Biomarkers: Measuring Immune Stimulation and suppression.
Mary L. Disis, Univ. Washington, Seattle, WA

  No.

176


 
09.04.30
アメリカ癌学会(AACR2009)の話題から-その1
       
 今年のアメリカ癌学会(AACR2009)はコロラド州デンバーにて4月18日から22日まで開催されました。雪のロッキー山脈が美しい遠景をなすアメリカ中西部のでっかい田舎町という雰囲気のデンバーには、約1.7万人が参加したといいますが、第4日目になったらグンと参加者が減少、どの会場も空きが目立つようになっていました。しかし、さすがに学会の中
味は濃いものでした。

 以下、その中からがん免疫に関係する話題を何回かにわけてお送りします。

 全体としてがん免疫療法は、Phase III trialで成功したものがどの製薬会社の製品でもまだ1つもないため、Rosenbergの養子免疫療法を除いては、元気がありません。Dendreon社のProvengeの最終データの報告がAACR
2009の直後の4月28日から始まるAm. Urol. Assoc.でなされる予定で、それに期待が集まっています。現状は、いかにしてがん免疫抑制系の細胞群(Treg, Th17, Macrophage 2, DC2)とそれらを制御するサイトカイン(IL-10, 他)の影響を避けるか、が重くて大きな課題となっています。

 Rosenbergの養子免疫療法については4月21日に講演が2つありました(1, 2)。要点は、以下のとおりです。
------------------------------
  ・「がんワクチンには腫瘍の治療効果がほとんどない、CD8+ killerの誘導能のみでは不十分だ(参照:Tumor progression can occur despite the induction of very high levels of self/tumor antigen-specific CD8+
T cells in patients with melanoma. J. Immnol. 175:6169, 2005)。

 ・ワクチンの臨床試験ではdisease-free adjuvant settingsに可能性がある(現在、「IL-2+peptide」ワクチンでrandomized trialが進行中)。

 ・ワクチンによる効果のうち、SD(stable disease)の貢献度合いはrandomized trialで評価すべきだ、そのときに様々な種類のsoft criteria を使用したのでは混乱のもとだ、histrical controlと比べるのもバイアスが多すぎる、それでもがん免疫療法の将来にoptimismがあるのは、養子免疫療法で好成績が出ているためだ。

 ・我々の養子免疫療法では、transfer of large no. of T cells to melanoma patients with TBI(total body irradiation) 1200 cGyを行っている。メラノーマ(n=25)では、72%の奏効率が出ている(2)。
 
Treatment   Total  PR  CR  (%)  
--------   ------ ---- ---- -----
No TBI      43    17   4   (49%)
(77+,45+,34+,29 (75+,70+,60+,59+) 28,14,13,11,8, 8,7,4,3,3,2,2,2)  

200 cGy TBI  25    11   2   (52%)
(45+,41+,35+,14, (49+,38+) 10,6,5,5,4,3,3,)

1200 cGy TBI 25    11   7   (72%)
(26+,19+,19+,19+, (29+,19,25+,25+,13,7,6,6,5,4,3) 19+,19+,18+)
-------- ------ ---- ---- ----
(52 responding patients: 42 had prior IL-2, 21 had prior IL-2 + chemotherapy)
* All patients with metastatic melanoma received a preparative regimen of cyclophosphamide (60mg Kg/day x2d) and fludarabine (25 mg/m2/day x5d) either with no total body irradiation (TBI) or with 200 or 1200 cGy TBI followed by the administration of autologous TIL plus IL-2 (720,000 IU/Kg q 8 h). 
(( ))の中がCR症例の生存期間

 ・これから学ぶべきは、genetically engineered peripheral blood lymphocyteの利用だ(→ Science, 314: 126-9, 2006)。このために使用するTCR geneは、1個のTILが取れればそこから調製し、ウイルスに組み込んで使える。

 ・我々がRECIST評価法を使っているのはrandomized trialが困難だからだ。
  → 個々の症例ですぐ結果がわかる。もちろん(SD増加による)OS延長、QOL上昇も重要だが、randomized trialで証明しなければならないという面倒さがある。
------------------------------

 CR症例では巨大メラノーマが消失している例のオンパレードがありました。これだけ煽られた会場の聴衆(ほとんどががんワクチン研究者)はシュンとなっていました。Rosenberg自身は、討論の中で、ワクチンの将来性に言及し、「Tolerance and anergyをどうするか、ワクチンはこのチェックポイントを克服できなければならない、我々の養子免疫療
法では手術と同じようなことをやっている(全身放射線照射など)、Tregをselectiveに除去すべきだ、anti-CD25抗体ではTregの約15%しか排除できない、anti-CD25-immunotoxinが良いかもしれない。」というアイデアを述べていました。

 会場では、がんワクチンの効果をアップするため、抗がん剤との併用可能性が議論され、また、ポスターでは動物実験の見事な併用実験結果が示されていましたが、この点の臨床応用については、検討中のところが多いようです。後続のドクター通信にて話題提供します。

 ☆★ なお、弊社では、Rosenbergの否定するsoft criteriaを逆手にとって、自家がんワクチンの効果を“おおまかに” 計測する手段として使用しています。

 ソフトクライテリアは、厳密な学術的批判に耐えうる評価基準ではありませんが、実は、傍で患者をみている家族がびっくりするほどのQOL改善があったというような“ヒトでなければわからない効果”を“おおまかに”計測するには有用だからです。

 ・その解説はこちらをご覧下さい。
   → http://www.aftvac.com/hc-sc-what.htm

 ・ソフトクライテリアを用い、自家がんワクチンの効果を「改善率」として数値化した表はこちらにあります。各種のがんを総合してみると、35%の症例でなんらかの改善効果が観測されています。
   症例数が増えれば増えるほど、「改善率」の数値の信頼限界は狭まり、信頼性の高い一定の数値に収束していく見込みです。
   → http://www.aftvac.com/vaccine2-2efficacy.htm
 

REFERENCES

1. AACR2009 4月21日 NCI/NIH-Sponsored Session
"Cancer Vaccines: Do They Work?"
Moderator: Drew M. Pardoll, Johns Hopkins Univ., Baltimore, MD
Speaker: 1) Steven A. Rosenberg, NCI, Bethesda, MD

2.AACR2009 4月21日 #SY35-3 Effective cell transfer therapy for patients with metastatic melanoma. Steven A. Rosenberg. National Cancer Inst., Bethesda, MD.

  No.

175


 
09.04.09
多発がんも1個のがん細胞から発生する--遂にヒトで証明
       
 4月8日着信のASCOからのニュースで、解剖学的には多発性と診断された肺癌のほとんどが、たった1個の肺がん細胞由来であることが、遂にヒトで証明された(Ref. 1)、とのことです。

 “がん”は、体内の1個の正常細胞が変異し、自律的な増殖能を獲得、増殖過程でさらに変異を繰り返しつつ悪性化し腫瘤に育ってから“がん”として認識される、というのが筆者が理解しているがん発生の多段階説ですが、動物実験では確認されていても、ヒトで、しかも、見かけ上まるで異なる(病理所見でも似てはいるがやはり異なる)がんが一つの器
官に出来ている場合に、はたしてこれがわずか1個のがん細胞由来なのかどうかは、これまで不明でした。定説化している学説であっても、ヒトでの証明がいかに難しいかを表す事例だと思います。

 この難題にチャレンジしたのがインディアナ大のグループで、多発性肺がん症例30例(がん組織としては全部で70個)、うち26例がnon?small cell carcinoma、4例がcarcinoid/atypical carcinoid tumorsでした。

 このがん組織をパラフィン包埋組織からレーザーマイクロデセクション法で切り出しゲノムDNAを抽出、loss of heterozygosity (LOH), TP53 mutations, and X-chromosome inactivation statusを分析したところ、多発肺がん間でLOHパターンが完全一致したのが26例 (87%、95% CI = 75% to 99%) 、TP53にpoint mutationがある10例のうち同一point mutationがあったのが8例、女性23例のうち全く同じX-chromosome inactivation パターンが見つかったのが18例(78%、95% CI = 67% to 98%) ありました。

 これらを合わせると、30例中23 例(77%、95% CI = 62% to 92%)が全く同一の遺伝子変異を持つ、すなわち同一症例の異なる肺がんでも、たった1個のがん細胞由来だと結論づけています。

 この結論から推定すれば、がん細胞が増殖する過程で見かけ上異なるがん組織が複数できているとしても、もともとは一個のがん組織とみなすことができ、それを治療すればよい、ということになります。

 摘出がん組織をまるごとがん抗原として使用する「自家がんワクチン」は、もとのがん組織にがん抗原が発現さえしていれば、一つの摘出がん組織を用いても多発性の残存がんに対応できる可能性が十分あります(もちろん、多発性のがん組織がそれぞれ入手できるならば、それらの微妙な違いをすべてカバーできるよう、できるだけ多くを混合してワクチン原料とすることも可能です)。

REFERENCES

1. Xiaoyan Wang, Mingsheng Wang, Gregory T. MacLennan, Fadi W. Abdul-Karim, John N. Eble, Timothy D. Jones, Felix Olobatuyi, Rosana Eisenberg, Oscar W. Cummings, Shaobo Zhang, Antonio Lopez-Beltran, Rodolfo Montironi, Suqin Zheng, Haiqun Lin, Darrell D. Davidson, Liang Cheng. Evidence for Common Clonal Origin of Multifocal Lung Cancers. J Nat Cancer Inst Advance Access published online on April 7, 2009.
doi:10.1093/jnci/djp054

  No.

174


 
09.04.03
がん化学療法は、がん免疫反応のアジュバントになっている
       
従来より、「抗がん剤治療はがん免疫反応を抑制する」とドグマティックに信じられてきましたが、必ずしもそうではない、というデータが蓄積しつつあります。

 例えば、脳腫瘍治療に用いられるテモダールについては、Heimbergerらは、”Despite conventional dogma, we demonstrated that chemotherapy and immunotherapy can be delivered concurrently without negating the effects of immunotherapy.”と主張、彼らの創成したペプチドワクチンCDX-110とテモダールを同時投与して治療に成功した膠芽腫の症例報告を出しており(1)、多数例によるPhase II臨床試験で期待をはるかに越える長期生存を達成したと報告しています(2、Full paperは未発表、詳細はおそらく今年のASCO2009に登場するでしょう)。

 しかし、それだけではなく、更に一歩踏み込んで、「がん化学療法の結果、がん免疫反応を抑制する抑制性T細胞(Treg)やミエロイド由来サプレッサー細胞(MDSC)を逆に抑制することによって、かえってがん免疫反応を促進する」という総説が発表されています(3)。

 この総説では、全体で90報の原著論文を引用していますが、低用量のcyclophophamideをメトロノーミックに投与することによってワクチン効果をはるかに増大できること、gemcitabineやamino-biphosphonateによってMDSCを抑制しワクチン効果を増強できること、等について述べ、抗がん剤のがん免疫反応への影響は、抗がん剤の直接的な殺がん細胞効果によるがん抗原スプレッディングにとどまらない、としています。

 また、逆に、先天性免疫不全の乳がん患者ではanthracyclinが効き難く、抗がん剤の効力にも免疫能が影響する例にも言及しています(総説内引用文献77)。

 免疫反応によるがん細胞のeliminationは、免疫監視機構の重要な機能の一つとして古くから議論されてきていますが、抗がん剤の治療効果でさえも(全部ではなく一部だけであっても)免疫反応を介しているとなると、強力な抗がん剤の処方により体内の免疫担当細胞までほとんど殺してしまうような化学療法を継続するのは、考え込まざるを得ません。

 今後は、“免疫能を生かすがん治療”の重要性がますますアップしていくのではないでしょうか。

REFERENCES

1. Heimberger AB, et al.: Immunological responses in a patient with glioblastoma multiforme treated with sequential courses of temozolomide and immunotherapy: Case study. Neuro-Oncology 10: 98-103, 2008.

2. Sampson JH, et al.: Tumor-specific immunotherapy targeting the EGFRvIII mutation in patients with malignant glioma. Semin Immunol. 20: 267-75, 2008.

3. Menard C, Martin F, Apetoh L, Bouyer F, Ghiringhelli F: Cancer chemotherapy: not only a direct cytotoxic effect, but also an adjuvant for antitumor immunity. Cancer Immunol Immunother 57:1579-1587, 2008.

  No.

173


 
09.03.25
自家がんワクチン療法--ソフトクライテリアによる評価表を更新  
          --訂正:集計値と症例記述--
        先週3月18日に発信しましたセルメディシンニュースNo.89にて、自家がんワクチン療法受診例(投与未満で中止した55例を除き)、291例を対象としたソフトクライテリア評価の一覧表を更新したことを報告いたしましたが、この中で、「脳腫瘍」と「胃がん」に関する集計値に訂正があります。
  転帰不明追跡不能例の中で臨床経過が判明した症例が出たため、この程、ホームページ上で訂正いたしました。

 以下の数値は
-----------------------------------------
がん種、全症例数、評価済み症例数、有効、長期不変・無増悪(1年以上)、無増悪(6ヶ月以上1年未満)、無効、評価済み症例中=改善率1、転帰不明追跡不能、転帰不明=無効とした場合=改善率2、経過観察中
-----------------------------------------
の順です

 脳腫瘍では、
<訂正前>
-----------------------------------------
脳、102、46、8、7、5、20、38、19、25、37
-----------------------------------------
<訂正後>
-----------------------------------------
脳、102、58、8、12、3、27、40、29、25、15
-----------------------------------------

 胃がんでは、
<訂正前>
-----------------------------------------
胃、52、28、1、5、0、18、25、15、15、9
-----------------------------------------
<訂正後>
-----------------------------------------
胃、52、29、1、6、0、18、28、14、18、9
-----------------------------------------

 この結果、全体の数値にも訂正があります。
<訂正前>
-----------------------------------------
全体、744、346、53、47、25、166、34.4、183、21.1、215
-----------------------------------------
<訂正後>
-----------------------------------------
全体、744、359、53、53、23、173、35.1、192、21.5、193
-----------------------------------------
となります。

従って、前回お伝えしました全体の改善率1
   34.4%
は、
   35.1%
が新しい数値となります。

 この数値は、先週3月18日以前にホームページに掲載していた古い数値(評価済み症例数がまだ全174症例だった当時の)「改善率1=35.0%」とほとんど変化がなく、学術的にみて厳密とは言いがたいソフトクライテリア評価であっても、症例数が十分あれば、臨床効果に関するかなり安定した評価が可能と考えられます。

 脳腫瘍では、前回お伝えしました改善率1は38%とされていましたが、40%が新しい数値となります。胃がんでは、改善率1は25%ではなく、28%が新しい数値となります。

 また、脳腫瘍のページの代表的症例は、脳腫瘍専門医の診断により、すべて悪性度の高いグレード3以上に達しているとされた症例ばかりでしたが、その説明が抜けており、グレード2のままと誤解される表現になっておりました。

 症例<232, 273, 299>はこの点を明確化する記述を追加しました。いずれもソフトクライテリアでは、改善例として評価された症例です。

 しかし、症例<239,297,435>は、厳密な確定診断ではなく、グレード2との境界領域と考えられる症例であることから、代表的症例から除外し、経過観察中の症例に分類いたしました。

 どうかこちらのページから、訂正された各がん種のページをご覧下さい。
  ・全体 → http://www.aftvac.com/vaccine2-2efficacy.htm
  ・脳腫瘍の治療実績と症例
      → http://www.aftvac.com/Brain-efficacy.htm
  ・胃がんの治療実績と症例
      → http://www.aftvac.com/Stomach-efficacy.htm

 ----------------- ----------------- -----------------
  ここでいうソフトクライテリアとは(それに対する学術的に厳密なハードクライテリアもあります)、こちらに解説があります。
        → http://www.aftvac.com/hc-sc-what.htm
  ----------------- ----------------- -----------------

  No.

172


 
09.03.25
自家がんワクチン療法--ソフトクライテリアによる評価表を更新--更に症例報告を追加公開--
        先週3月18日に発信しましたセルメディシンニュースNo.89にて、自家がんワクチン療法受診例(投与未満で中止した55例を除き)、291例を対象としたソフトクライテリア評価の一覧表を更新したことを報告いたしました。この中で、
   34.4%
の症例で、改善効果が見られています。

 この表に続けて、各がん種ごとの代表的症例について、短い経過報告をがん種ごとに追加し公開しましたので、ご覧いただければ幸いです。

 症例数はそれぞれ、
  大腸がん 16例
  乳がん   8例
  脳腫瘍  23例
  肺がん   8例
  肝がん  16例
  胃がん   7例
  卵巣がん  4例
  腎がん   5例
  子宮がん  3例
  膵がん   2例
  その他のがん:
    甲状腺がん 2例
    メラノーマ  1例
    胆管がん   1例
    舌がん    1例
    喉頭がん   1例
    前立腺がん 1例
    中皮種    1例
    組織球腫   1例
です。

 こちらのページから、各がん種のページをご覧下さい
   → http://www.aftvac.com/vaccine2-2efficacy.htm

  No.

171


 
09.03.18
免疫を抑えるT細胞が、免疫応答を促すヘルパーT細胞へ分化
       今週のScience誌に、「免疫を抑えるT細胞が、免疫応答を促すヘルパーT細胞へ分化」するという論文が掲載されています(1)。

 これは、理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターからの報告で、Foxp3+ T Cellが腸管のPeyer's PatcheでFollicular B HelperT Cellに分化するというものです。解説が
→ http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2009/090313/index.html
に掲載されています。

 最終分化したはずのT細胞が、新たな機能を獲得して全く別の機能を発揮する細胞に再分化するというのは、従来常識にはない驚きです。

REFERENCE

1.Masayuki Tsuji, Noriko Komatsu, Shimpei Kawamoto, Keiichiro Suzuki, Osami Kanagawa, Tasuku Honjo, Shohei Hori, and Sidonia Fagarasan. Preferential Generation of Follicular B Helper T Cells from Foxp3+ T Cells in Gut Peyer's Patches.
Science 13 March 2009: 1488-1492.

  No.

170


 
09.03.11
自家がんワクチン療法--ソフトクライテリアによる評価表を更新
       
 自家がんワクチン療法は、今年3月9日時点で累積受診症例数が900例を越えました。ひとえに臨床現場に採用していただいた先生方のご協力の賜物と感謝しております。おかげさまで、最近も受診症例数が増加しつつあります。

 昨年6月末時点で、症例の経過報告を一旦締め切り、48種類のがん種および原発不明に分類の上で、評価可能であった346例について、ソフトクライテリアの観点から評価した一覧表を、この程更新しました。自家がんワクチン専用ホームページ上でご覧下さい。

 ただし、評価済み症例から、自家がんワクチンを1コース(ワクチンとしては3回接種、その前後にDTHテスト注射を行うがこれはワクチン接種にカウントしない)投与未満で中止した55例を除き、291例を解析対象としております。

 こちらです → http://www.aftvac.com/vaccine2-2efficacy.htm

 ----------------- ----------------- ----------------- ----------------- -----------------
  ここでいうソフトクライテリアとは(それに対する学術的に厳密なハードクライテリアもあります)、こちらに解説があります。
        → http://www.aftvac.com/hc-sc-what.htm
  ----------------- ----------------- ----------------- ----------------- -----------------

 今回採用したソフトクライテリアの定義では、従来、弊社ホームページで公表してきた定義から、若干の改訂を行いました。1年以上または6ヶ月以上の「無再発」を、1年以上または6ヶ月以上の「無増悪」に改めたものです。
  それぞれのがん種ごとに、症例を以下のように分類しました。

 1)改善:残存腫瘍サイズ縮小、腫瘍マーカー減少、推定余命より2倍以上の延命、QOL(KPS評価)の明らかな改善等
   の数値化できる指標のいずれか; 主治医の評価による何らかの臨床上の好ましい反応があったもの(→ 53例)
  2)長期不変・無増悪(1年以上):ワクチン投与後1年以上無再発あるいは無増悪(→ 47例)
  3)無増悪(6ヶ月以上1年未満)(→ 25例)
  4)無効(→ 166例)

 弊社では、臨床現場で自家がんワクチンの効果があったと実感していただけるのは、1)の明瞭な改善効果が見られた症例だけではなく、2)の長期不変・無増悪(1年以上)の症例も、そうであろうと推定しておりま す。

 しかし、3)の無増悪(6ヶ月以上1年未満)では、がん免疫分野の学会では有効例に分類すべきだという議論が多々ありますが、臨床現場では、「これは効いた」という実感が湧かないことも多く、学術的に厳密なハードクライテリアではないソフトクライテリアのレベルであっても、有効と主張するのは、未だ困難であろうかと思われます。

 このような情勢から、〔改善例数+長期不変・無増悪(1年以上)例数〕の割合「改善率1」と定義して算出してみますと、
   (53+47)/291 = 34.4%
となり、2007年2月6日時点までのデータ(解析対象は174例)35%とほと んど変わらない結果となりました。

 また、今回の解析では、1コースの自家がんワクチン接種を完遂したにもかかわらず「転帰不明追跡不能」となった症例が183例ありました。これらを、仮に、全例無効として「改善率2」を算出してみましたところ、
   (53+47)/(291+183) = 21.1%
となりました。

 すなわち、全体の「1/3〜1/5」の症例で「自家がんワクチンを接種しておいてよかった」と思っていただけるものと思います。

 現在、自家がんワクチン療法を含め、自由診療ベースのがん免疫療法を受診されている患者様のほとんどが、いわゆる“がん難民”に相当する末期がんの方々であることを考えれば、「改善率1」(より厳しくとった「改善率2」でも)の割合は、強力な化学療法を追加実施した場合に比べて遜色はなく、問題となる有害事象がほとんどない上、高いQOLが維持できるというメリットが非常に大きいと思われます。

 ご意見を直接弊社までお寄せいただければたいへん有難く存じます。

  No.

169


 
09.02.23
非小細胞肺がん:先に化学療法、後からワクチンでも良い場合がある
       
 非小細胞肺がんstage IIIBまたはIVで、ファーストラインの化療後になお残存する肺がんを追加化療でなんとかしようとしても、常識的には非常に困難とされています。更なる強力な化療にはかなりの危険が伴います。

 そこで、キューバのグループは、このような化療後の進行肺がんで、未だ骨髄機能が残っている症例に、抗EGF抗体を誘導するワクチン投与を試みています(ワクチンの種類は自家がんワクチンとは異なる抗体誘導を目的としたものですが、免疫反応を惹起しようとする目的は同じです)。

 抗EGF抗体が誘導され血中EGFが低下したグループでは、生存期間中央値が11.7ヶ月でした。誘導されにくかったグループ(3.7ヶ月)や対照群(5.3ヶ月)よりも予後がよい(p=0.0002)と報告しています(1)。

 論文を見ると、実際には、ファーストラインの化療4週後に低用量のcyclophosphamide(200mg/m^2)を投与、一旦白血球数を急減させ、回復期に入る3日後からワクチンを毎週1回筋注、4週後からは月1回にして継続投与し、しかも遠隔転移巣がある場合には局所放射線治療を後から追加しています。

 こうした細かい工夫を重ねることによって、化療だけでは治癒の見込みがない進行がんであっても、免疫療法でかなりの延命が期待できるとなれば、進行がんの「術後再発」例に対してもあきらめることはありません。

 化療後の骨髄機能回復を待って「がんワクチン」を投与すれば、治癒に至らずとも無駄ではなく、それなりの延命効果は期待できると推定されます。

REFERENCE
 
1. Vinageras EN, et al.: Phase II Randomized Controlled Trial of an Epidermal Growth Factor Vaccine in Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer. J Clin Oncol 26, 1452-1458, 2008.

(お知らせ)
****************************************************************
1.「初発の脳腫瘍」について新たな臨床研究が始まっています
  - 適格の患者様には、大幅な優遇措置があります -

(具体的なお問い合わせはこちらにお願いします ↓ )

 *筑波大学附属病院・脳神経外科
    〒305-8576 茨城県つくば市天久保2-1-1
    TEL: 029-853-3220(脳神経外科医局)
  または、
  *東京女子医科大学病院・脳神経外科
   〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
    TEL:03-3353-8111
    (代表、ここから脳神経外科医局につないでもらってください)

2. 「再発肝がん」について新たな臨床研究が始まっています
  - 最先端の陽子線治療が筑波大病院で、非常に有利な条件で受けられ
   ます -

(具体的なご相談はこちらにどうぞ ↓ )

 *筑波大学附属病院・陽子線医学利用研究センター
    〒305-8576 茨城県つくば市天久保2-1-1
    TEL: 029-853-7100 FAX: 029-853-7102
E-mail: proton_therapy@pmrc.tsukuba.ac.jp
****************************************************************

  No.

168


 
09.02.16
パラフィン包埋組織からの遺伝子発現検査
       
 がん組織中のがん抗原ペプチドは、ホルマリン固定操作でもほとんどが壊れないことは既に知られていますが、このほど、ホルマリン固定組織でも、定量的なmRNA発現検査が可能であることが示され、しかも、予後と遺伝子発現との相関解析までなされました(1)。

 びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL)を対象に,ホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックを用いた遺伝子発現解析を行い,rituximab (R)-CHOP 療法下の生命予後予測に有用な遺伝子を探索した結果、MYC が高発現(至適cutoff 値は>80%),HLA-DRB が低発現(同< 20%)の症例群でoveall survivalが有意に短く、予後不良となることが明らかにされました。

 このことは、ホルマリン固定を経たパラフィン組織中でさえ、タンパク以上に不安定とされているmRNAもかなり良い状態で保存されており、遺伝子発現レベルの検討にも耐えうる良好な状態にあることを示しています。

 弊社の自家がんワクチンは、ホルマリン固定がん組織を原料に作成しておりますが、(パラフィン包埋ブロックも含めて)ホルマリン固定がん組織中のがん抗原は、十分安定に保たれていると考えられます。

 がん組織のパラフィン包埋ブロックを民間検査会社に預けたままにして3ヶ月以上放置した場合、廃棄処分されてしまうことがあります。

 医療機関の先生方には、有用な残存がん抗原を有効利用するため、ぜひ、もとの患者様にパラフィン包埋ブロックを返却されますよう、ご配慮の程お願い申し上げます。

REFERENCE
 
1. Rimsza LM, Leblanc ML, Unger JM, Miller TP, Grogan TM, Persky DO, Martel RR, Sabalos CM, Seligmann B, Braziel RM, Campo E, Rosenwald A, Connors JM, Sehn LH, Johnson N, Gascoyne RD.:Gene expression predicts overall survival in paraffin-embedded tissues of diffuse large B-cell lymphoma treated with R-CHOP. Blood. 2008 Oct 15;112(8):3425-33.

  No.

167


 
09.02.09
大腸癌転移症例にBevacizumab(アバスチン)とCetuximab (アービタックス)を併用するとかえって予後を悪化させる
       
 先週のNew Eng J Med(2月5日号)に、表題のような論文が掲載されました(1)。

 755例の未治療大腸癌転移症例をランダムに2群にわけ、
   対照群(capecitabine, oxaliplatin, bevacizumab、378例)と、
   追加治療群(上記にcetuximab(anti-EGFR抗体)を追加、377例)
を比較したところ、progression-free survivalは、
   対照群で10.7ヶ月
   追加治療群で 9.4ヶ月 (p=0.01)
となり、QOLスコアも後者で低く、Grade 3,4の有害事象も多いという結果でした。

 “More is not always better”というDana Farber Cancer Inst.のProf. RJ Mayerのコメントが出てます。
  (→ http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601124&sid=avVMsOpLVVpg&refer=home )

 転移のある大腸癌症例の複合的抗体療法では、慎重さが必要です。

REFERENCE

1.Tol J, et al., Chemotherapy, Bevacizumab, and Cetuximab in Metastatic Colorectal Cancer. New Eng J Med 360:563-572, 2009.

  No.

166


 
09.02.06
新たな脳腫瘍の臨床研究が始まりました
       
 「がんワクチン療法研究会」では、脳腫瘍のうち、最も難治性といわれる膠芽腫を対象に、2005年7月より「膠芽腫患者に対する自家腫瘍ワクチンを用いた臨床第I/IIa相共同研究」(UMIN試験ID:C000000002)を東京女子医大、筑波大にて実施して参りました。この症例登録は一昨年10月で終了し、現在はフォローアップ段階に入っております。中間解析段
階では、現在の標準的な治療法に劣らない結果となりつつあります。

 しかし、この臨床研究は、膠芽腫に対する標準的な抗癌剤テモダールが日本における国家承認を受ける前にスタートしていたため、
   「膠芽腫手術 → 放射線治療+自家腫瘍ワクチン」
というプロトコールになっておりました。

 今回、テモダール投与を含む現在の標準的な膠芽腫治療法、「膠芽腫手術 → 放射線治療+テモダール」に、さらに自家腫瘍ワクチンを上乗せする形で、
   「膠芽腫手術 → 放射線治療+テモダール+自家腫瘍ワクチン」
というプロトコールで、新たに臨床研究をスタートさせることになりました。このプロトコールは既にUMINに登録されています。

 UMIN試験ID: UMIN000001426
  試験簡略名: 膠芽腫に対する自家腫瘍ワクチン/テモゾロマイド共同研究

 初めて脳腫瘍のうちの膠芽腫(グレードIV)であることが判明した患者様で、手術前の方は、以下の大学病院にご相談下さい。専門医から詳細な参加登録条件が提示されます。条件が合えば自家腫瘍ワクチンを併用した臨床試験に参加可能です。

 試験内容・費用の詳細については、UMINのホームページ
   https://center.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi?function=brows&action=brows&type=summary&recptno=R000001734&language=J
にてご確認ください。 臨床研究として一部の治療費が研究費から負担されます。

 現時点では全25例で登録終了とする予定です。具体的なお問い合わせはこちらにお願いします ↓

 *筑波大学附属病院・脳神経外科
    〒305-8576 茨城県つくば市天久保2-1-1
    TEL: 029-853-3220(脳神経外科医局)
または、
  *東京女子医科大学病院・脳神経外科
   〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
    TEL:03-3353-8111
    (代表、ここから脳神経外科医局につないでもらってください)

  No.

165


  09.02.03
再発肝がんについて新たな臨床研究が始まっています
  - 最新の陽子線治療が筑波大病院で受けられます -
       
 筑波大学附属病院・陽子線医学利用研究センターでは、本邦でも数少ない陽子線照射によるがん治療を行っており、国の先進医療制度にて混合診療を実施することが認められています。

 陽子線治療は、肝細胞がんに有効で、5年間の観察で約90%が制御されるという非常に優れた治療成績をあげています。がんが1個しかない50人の患者様の5年生存率は、手術とほぼ同等の53.5%でした。

 → http://www.pmrc.tsukuba.ac.jp/kanzou.html

 このほど、「再発肝がん」に対し、陽子線治療と免疫療法を組み合わせた臨床研究が新たに始まりました。

 この臨床研究に参加を希望される場合、厳密な参加登録条件の事前審査がありますが、条件を満たされた患者様につきましては、陽子線治療は先進医療とはならず、免疫療法の費用もかかりません

 筑波大学から案内文が弊社に来ておりますので、転載します。この参加登録条件に合うと思われる患者様は、筑波大学附属病院・陽子線医学利用研究センターにお問い合わせください。

 筑波大学附属病院は、「つくばエクスプレス」なら東京・秋葉原から快速で45分(つくば駅)、そこから1.6km、タクシー3分です(バスもあります)。

  -----------------------------------------

        【再発肝がんに対する臨床研究】

 陽子線治療は肝がんに対する局所療法としてとても優れた治療法ですが、その後の肝内再発を防ぐことが現在重要な課題となっています。

 そこで筑波大学陽子線医学利用研究センターでは、再発肝がんに対して陽子線治療と新たな免疫療法を組み合わせた臨床試験を行っております。以下のような条件を満たし、本試験にご参加いただける場合、先進医療は適応されず、陽子線治療と免疫療法に関する費用はかかりません。

 現在の主治医とよくご相談の上、受診方法を読んでご連絡いただければ、担当医が必ず対応いたします。

【臨床試験の目的】

 再発肝がんに対する、陽子線照射と新たな免疫刺激剤を投与する治療法の安全性と有効性(再発予防効果)について検討する。

【本臨床試験にご参加いただくための条件】

   1)肝がん再発と診断されている
   2)陽子線治療が可能でありメリットもある
   3)がんの大きさが画像診断法によって測定可能である
   4)6ヵ月以上の生命予後が見込まれる
   5)陽子線治療を行うための肝予備能がある
   6)事前に化学療法を受けている場合は、骨髄機能が十分回復している
   7)腎機能が正常である
   8)時に介助が必要であるが自分でやりたいことの大部分は自分でできる
   9)年齢は満20歳以上で80歳未満である
   10)病名および病状をよく理解している
   11)本臨床研究後も当院または当院の関連施設に通院可能である

 ただし以下の患者様は対象となりません。

   1)過去5年以内に肝がん以外の悪性腫瘍の既往がある、または現
     在罹患していると疑われている
   2)自己免疫疾患の既往がある、または、現在罹患していると疑われている
   3)HIV(いわゆるエイズウイルスのことです)に感染している
   4)本臨床試験を行うことが困難と考えられるような合併症がある
   5)本治療法施行前の4週間以内に、(1)抗がん剤または副腎皮
     質ステロイド剤を全身投与したことがある、または、(2)全
     身に影響する放射線照射または生物学的治療をしたことがある
   6)妊婦、授乳婦、および妊娠している可能性、またはその意志がある

 ご参加いただくには所定の説明書による説明を受けていただいたうえで所定の同意書によるインフォームドコンセントが必要です。

(具体的なご相談はこちらにどうぞ ↓ )

 *筑波大学附属病院・陽子線医学利用研究センター
    〒305-8576 茨城県つくば市天久保2-1-1
   TEL: 029-853-7100 FAX: 029-853-7102
   E-mail: proton_therapy@pmrc.tsukuba.ac.jp

  -----------------------------------------

  No.

164


  09.01.19
HCV感染者は肝細胞がん以外に肝内胆管がんにも要注意
       C型肝炎ウイルス感染経験者は、肝細胞がん(HCC)を発症しやすいことは良く知られていますが、同時に肝内胆管がん(ICC)発症のリスクも高いことが、このほど大規模疫学調査で明らかにされました(1)。

 El-Seragらは、146,394人の感染経験者を対象にcohort studyを行い(対照は572,293人の非感染経験者)、HCC:1679例、ICC:37例、肝外胆管がん:75例、膵がん617例を発見しています。

 発症リスクを計算すると、HCCは対照群の15倍、ICCは2.5倍となっています。しかし、肝外胆管がん、膵がんの発症リスクは有意に高いわけではないそうです。

 HCV感染者は肝細胞がん以外にも、肝内胆管がんにも要注意です。

 肝内胆管がんは発生頻度が少ないとはいえ、治癒切除後の再発リスクが高く、5年生存率は50%程度、非治癒切除例ではわずか2%(2)、手術しなければ1年はもたないといわれ、予後不良です。

REFERENCES

1. El-Serag HB, Engels EA, Landgren O, Chiao E, Henderson L, Amaratunge HC, Giordano TP.: Risk of hepatobiliary and pancreatic cancers after hepatitis C virus infection: A population-based study of U.S. veterans. Hepatology. 2009 Jan;49(1):116-23

2. http://siclinic.blog57.fc2.com/blog-entry-18.html

  No.

163


  09.01.05
スーパー特区プロジェクト
       
明けましておめでとうございます。
  旧年中は皆様にはたいへんお世話になり、誠に有難うございました。グローバル経済は激動の1年でしたが、弊社はおかげさまにて落ち着いた1年でした。

 しかし本年は、がんワクチン療法を取り巻く環境が間違いなく激動の時代に入ります。昨秋、内閣府による「スーパー特区」プロジェクトが開始されましたが、裏づけとなる予算措置が取られておらず、いわば未だお題目の段階でした。それが本年4月からは政府予算がつき、がんワクチン開発、それも商業化開発が本格化するからです。

 このスーパー特区プロジェクトで採択された全24課題中、がんワクチン開発に直接関わる課題が3課題もあります。
   1.「免疫先端医薬品開発プロジェクト−先端的抗体医薬品・アジュバントの革新的技術の開発」
   2.「迅速な創薬化を目指したがんペプチドワクチン療法の開発」
   3・「複合がんワクチンの戦略的開発研究」

 国の予算をもらう以上、これら3課題とも、5年以内に実用的な研究成果、実際にヒト臨床で役に立つ種類の異なる「がんワクチン」そのものを作りあげ、それを世の中に送り出さなくてはなりません。すなわち、本当にヒトのがん治療に使えるという国家の証明付きの医薬品を出すべし、という義務を負うことになるのです。そのため、それぞれの研究課題を実施する多数の大学群の後には、課題ごとに企業が一体となってサポートする体制を取っています。

 これは、大学による「研究成果を上げ論文をだせばよい」という従来のような単純な図式とは全く異なるステージに入ったこと、3課題間の研究競争だけではなく、その後に控える企業間競争の号砲も同時に鳴ったことを意味しております。

 弊社も「自家がんワクチン」で蓄積してきた技術を応用する形で協力し、スーパー特区プロジェクトの末席に連なることになりました。「自家がんワクチン」は、自由診療ベースで実用化してから既に7年、着々と臨床効果をあげており、高い治療実績を示してきています。特に昨年11月に開催された第5回がんワクチン療法研究会では、低用量抗がん剤や放射線治療との併用により、難治性がんにも治療効果・再発抑制効果があることが、続々と症例報告で示されました。無作為対照ランダム化臨床試験で、明瞭に術後肝がん再発予防効果があるというエビデンスレベルの高い臨床データもある「自家がんワクチン」の強みが、他の難治性がん治療ステージでも発揮されているためと思われます。

 しかも、「自家がんワクチン」は、ペプチドワクチンや単一がん抗原タンパクワクチンと相反するものではなく、がん組織そのものを抗原としている故に、ペプチドワクチン等ではカバーできない未知のがん抗原や、がん組織に特徴的なストローマ細胞群由来の抗原をも含んでおり、患者さん個々人特有のがんワクチンとなっています。両者の同時併用も含めて、共存可能な技術となり得る特徴を備えているのです。

 読者の皆様におかれましては、すでに実用化している「自家がんワクチン」の一層の有効利用をお考えくださいますよう、どうか本年もよろしくお願い申し上げます。

  No.
162

  08.12.24
NIHも注目:放射線とがんワクチン療法の併用療法
     

 従前から、筆者らは放射線照射されたがん細胞は、ワクチンによって誘導されたCTLに殺されやすい状態になっているため、放射線と自家がんワクチンの併用は、大きなベネフィットをもたらすはずだと考え、基礎研究の成果を発表してきました(1、acceptがApr 14, 2004)(参照:ドクター通信 from セルメディシン No. 53、2006.7.3発信)。

 ほとんど同時に同じ考え方をしたGarnettらの論文(2、acceptがAug 24,2004)が出されましたが、彼らは、放射線量が低くても(nonlytic dose、10 or 20 Gy)、がん細胞はキラー細胞により十分殺されやすい状態になっていると発表しています。

 これを受けて、今年のOncology誌 No.9に、放射線とがんワクチン療法の併用法に関する総説がでています(3)。この総説、注目すべきは、米国NIHのNational Cancer Instituteのグループが、明確に、放射線治療とがんワクチン療法は併用すれば相乗的効果が期待できると書いていることです。しかも、照射線量は、必ずしもフルドーズの60Gyである必 要はなく、低線量でも良いとしています。

 ちなみに、2Gyづつの分割照射で20Gy程度までならば、腸管を含めてほとんどの正常組織が問題なく耐えられるとされておりますので、全身にがん細胞が散らばっている末期で、従来ならば放射線治療がしにくい場所に主病巣がある場合でも、「主病巣に対する低線量照射+がんワクチン」という同時併用療法によって、ワクチンにより体内で誘導されたCTLが、放射線照射で弱った主病巣のがん細胞を殺し、さらに活性化して、主病巣以外の微小がんもたたくというアブスコパル効果が期待できるはずです。

 この総説では、このような見通しに添った臨床効果を前立腺がん等で得たという報告が引用され解説されています。

 → この総説の詳細に関するお問い合わせは、メールにて弊社まで
       E-mail: tkb-lab@cell-medicine.com

REFERENCES

1. Ishikawa E, Tsuboi K, Saijo K, Takano S, and Ohno T: X-irradiation to human malignant glioma cells enhances the cytotoxicity of autologous killer lymphocytes under specific conditions. Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys. 59: 1505-1512, 2004.

2. Garnett CT, Palena C, Chakarborty M, Tsang KY, Schlom J, Hodge JW: Sublethal Irradiation of Human Tumor Cells Modulates Phenotype Resulting in Enhanced Killing by Cytotoxic T Lymphocytes. Cancer Res 64, 7985?7994, 2004.

3. Hodge JW, et al., Synergizing Radiation Therapy and Immunotherapy for Curing Incurable Cancers - Opportunities and Challenges. Oncology 22(9), 1064-70, 2008.

  No.
161

  08.12.05
CTスキャンの使いすぎに要注意
     

米国では年間6200万回のCTスキャンが行われているとのことですが、これが第2の発ガンをうながす可能性があると、12月2日付けのロイター通信で警告されています。

 → http://www.reuters.com/article/healthNews/idUSTRE4B16GH20081202?feedType=RSS&feedName=healthNews

 この問題は、Harvard medical Schoolに連携しているBrigham and Women's hospitalとDana-Farber Cancer Instituteの患者調査で判明したもので、2007年にCTスキャンを受けた症例の過去22年間のoverall radiation exposureと照合した結果、7%の患者ではベースラインレベルよりも発ガン頻度が1%高くなるとのことです。

 この発表をしたA. Sodicksonらは、医師がCTスキャンの申し込みをするときに、患者ごとのCTスキャン履歴からリスクを計算し、画面にポップアップする警告システムを開発中とのことです。

 CTスキャンは、通常の検査では安全で問題はないとしても、累積照射線量は(特に古い機械では)単純X線検査の50-100倍に達することがあります。使いすぎには要注意です。

  No.
160

  08.11.29
第5回がんワクチン療法研究会から−その3
     
 先週22日(土)、東京・秋葉原にて第5回がんワクチン療法研究会が開催されました。今回の会では、「低用量化学療法」の効果とがん免疫療法との併用例の検討が主題です。

          --------------------------

 前号に続き、以下に注目された一般演題を紹介します。

【一般演題1−1】低用量抗癌剤併用下に自家癌ワクチン療法を施行し3年8ヶ月の無再発を得た
進行胃癌の一例

 これは尾道総合病院からの症例報告ですが、2005年1月の手術時に腹水中細胞診で陽性のため非治癒切除に終わった方です。しかも術後のUFT内服治療(300mg/day)では、薬疹が発生したため、患者は処方薬をほとんど服用していないという、結果的には「自家がんワクチン3コース+超低用量UFT」併用になってしまった症例です。

 2008年9月に肝転移とリンパ節再発を認めるまで3年8ヶ月無再発を得、現在生存中です。術時の腹水混濁状況からはこれほどの長期間無再発は考え難く、マイルドな化学療法との併用が奏効したものと思われます。

【一般演題1−2】自家腫瘍ワクチンとテモゾロマイドの併用療法で著明な縮小を認めた膠芽腫の1例

 Glioblastoma multiformeは進行がんの中でも特に治療に難渋することが知られていますが、現在標準治療となっている「手術+放射線+テモゾロマイド」治療後の再発症例に、間歇的テモゾロマイド維持療法の合間に自家がんワクチン1コース接種を挿入したところ、わずか1ヶ月でPRとなったという、筑波大からの報告でした。

 本例では、「放射線再照射が行われていない点と、1コース目のテモゾロマイド内服のみでは腫瘍縮小を認めなかった点より、自家腫瘍ワクチンもしくは、テモゾロマイドとの併用が腫瘍縮小の原因となった可能性が高いと推測される」と述べています。

【一般演題1−4】自家ワクチン療法を施行した神経膠芽腫に関する治療経験

 これは、東京女子医大脳外科・銀座並木通りクリニックからで、2003年3月〜2007年12月の間のGlioblastoma multiforme(GBM)治療例29例をまとめた報告でした。

 興味深かったのは、「初発症例:手術+放射線+ワクチン療法」17例と、「初回症例:手術+放射線化学療法(ACNU, VCR) → 再発前にワクチン施行」7例の比較でした。他に「再発症例:手術+放射線化学療法 → 再発後にワクチン施行」5例があります。

 「初発」と「初回」の定義を混同しやすいのですが、後者には化学療法が含まれている点が違います。「初発」のOS中央値は21.4ヶ月、しかし、「初回」症例のそれは38.2ヶ月もありました。

 しかも、初回症例中には、50.5ヶ月と33.9ヶ月という、従来常識では考えられない無再発長期生存例が出ていました。

 「再発」症例のOS中央値は19.7ヶ月で、これでも、(再発症例が含まれず初発GBMを対象にした)
標準治療
の根拠となったStuppの報告「手術+放射線+化学療法(テモゾロマイド)」のOS中央値14.6ヶ月よりも長くなっています。

 演者は、「GBM初期治療にて自家ワクチン療法を施行した29例では、現在標準とされている手術+放射線+テモゾロマイドに比べてOS、PFSいずれも成績は上回っていた」と結論づけています。

 ロビーで聞いた演者の感想は、「解析してみて、自分でもびっくりしました、こんなに効いているとは」というものでした。GBMでは、少なくとも「手術+放射線化学療法」の初期治療後、“再発前に”、「自家がんワクチン療法」を実施すれば、3年以上も生き延びられる可能性があることを示唆しています。

         --------------------------

 自家がんワクチン放射線治療との相性が良いことを示す発表は、他にもありました。

【一般演題1−3】「切除・電子線照射・自家癌ワクチンの併用」が奏効した再発下腿MFH (malignant fibrous histiocytoma) の一例

 つくばセントラル病院からの報告では、「四肢MFHは根治術後も約44%に再発・転移を生ずる予後不良の疾患」とされており、「再発腫瘍切除後の局所再発や遠隔転移を抑制する有効な治療法は確立されていない」とのことです。

 今回の症例は、根治術後の再発例で、他院では下肢切断を宣告されていた方ですが、自家がんワクチンと電子線照射の併用により下肢切断を回避、現在も再々発なく、術後2年10ヶ月経過後も完全社会復帰しているとのことです。

        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 以上のように、最難治性がんであるGBMでさえ、標準治療の2倍以上のOS中央値になるというほどの好成績になるならば、他のがん種でも、「手術+放射線+(免疫系を壊さない低用量の)化学療法+自家がんワクチン」という治療体系に変更することによって、がん治療成績を大幅に向上できる可能性があります。

 今後、弊社では、真摯にこの可能性を追求して参りますが、どうか読者の先生方にも前向きにご検討賜れれば、たいへん有難く存じます。

        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 今回のがんワクチン療法研究会では、これらの他にも、

【一般演題2−1】自家がんワクチンによる肝癌の再発予防あるいは進展阻止効果についての検討(京都府立医大、たけだ免疫・遺伝子クリニック)

【一般演題2−2】樹状細胞調整法の工夫と肝癌免疫療法の開発(金沢大)

【一般演題2−3】イヌおよびネコの自然発症腫瘍に対する自家がんワクチンの評価(鳥取大)

の発表がされ、自家がんワクチン治療法から樹状細胞療法にまで、研究対象の間口が広がってきています。今後この研究会は、他のがん治療法を巻き込み、益々発展していくものと思われます。

  No.
159

  08.11.29

第5回がんワクチン療法研究会から−その2

     
 先週22日(土)、東京・秋葉原にて第5回がんワクチン療法研究会が開催されました。今回の会では、「低用量化学療法」の効果とがん免疫療法との併用例の検討が主題です。

          --------------------------

 会長講演に続いて行われた教育講演は、

   「がん休眠療法--免疫療法に相性の良い抗癌剤治療とは--」

で、千葉大・がん分子免疫治療学の高橋豊先生から、がん休眠療法の理論について丁寧な解説がありました。

 要点を並べると、

・従来の標準的抗がん剤投与量は、わずか10-15人程度の被験者で決定された最大耐用量(MTD)かその一つ前段階の量を、いきなり誰にでも投与している。お酒に強い人、弱い人がいるのを全く無視してウイスキーのがぶ飲みを強いるようなもので、継続投与が不可能になりやすい。

・継続不能となって投与を中止すると、がんは急速に再増殖する。がん細胞数は指数関数的に増えるため、抗がん剤によりPRを得られていたとしても、中止後はすぐさま元以上の大きさになり増大していく。

 [* 筆者注:仮に2日に1回分裂するとすれば、RECIST法でPR(直径が30%減少、体積換算では65%減少にあたる)となっていたとしても、抗がん剤を中止するとわずか4日で4倍となり、元よりも大型化する計算になります。]

・症例ごとに抗がん剤の効果があった期間を調べてみると、がんサイズ等の指標は一旦減少するが、その後定常状態となり、再び上昇してくるパターンとなる。その中では、定常状態期間が最も長く、全体の有効期間を決めている(1, 2)。

・それならば、意図的に定常状態を長引かせるように継続可能な投与量に減量して抗がん剤を投与すれば、延命効果が得られるはずである。

・そこで、まず標準の半量を投与、耐性のある患者は次の段階で増量し、ない患者はさらに減量するという方法を段階が進むごとに繰り返していくという (個別化最大継続可能量、iMRD) 方法(3)によるランダム化臨床試験を行い(4)、投与量の差では生命予後に差がでないことを確かめた(全国的な大規模臨床試験の最終結果は、European Society for Medical Oncology, ESMO2008で報告)。

・低用量抗がん剤の血中濃度を効果が期待できる濃度に保つのが理想だが、実際上は、患者ごとに毒性をグレード 1ないし 2に合わせるように投与すればよい。

・GemcitabineやTS-1は、比較的毒性が低く継続性で優れている。iMRD法をとれば、免疫療法との相性は良いはずだ。

          --------------------------

 東大薬学部で11年間にわたり抗がん剤の実習と講義を担当し、あまりの毒性の強さに辟易してすっかり抗がん剤嫌いになっていた筆者にとっては、前号のドクター通信No.158で報告した銀座並木通りクリニック・三好立先生の会長講演とともに、目からウロコの講演でした。

 ドクター通信の次号では、今回のがんワクチン療法研究会で発表された、低用量化学療法(GemcitabineやTS-1だけではありません)と自家がんワクチン療法を併用し優れた効果が認められた実際の症例について報告します。

              *****

REFERENCES

1.Takahashi Y, Nishioka K. Survival without tumor shrinkage: re-evaluation of survival gain by cytostatic effect of chemotherapy.
J Natl Cancer Inst. 1995 Aug 16;87(16):1262-3.

2.Takahashi Y, Mai M, Taguchi T, Urushizaki I, Nishioka K.
Prolonged stable disease effects survival in patients with solid gastric tumor: analysis of phase II studies of doxifluridine.
Int J Oncol. 2000 Aug;17(2):285-9.

3.Takahashi Y, Mai M, Sawabu N, Nishioka K.
A pilot study of individualized maximum repeatable dose (iMRD), a new dose finding system, of weekly gemcitabine for patients with metastatic pancreas cancer.
Pancreas. 2005 Apr;30(3):206-10.

4.Takahashi Y, Takeuchi T, Sakamoto J, Mai M, Kitajima M, Kubota T, Toge T, Saji S.
[A randomized phase II clinical trial of tailored CPT-11 + TS-1 vs TS-1 in patients with advanced or recurrent gastric carcinoma as the first-line chemotherapy (JFMC31-0301)]
癌と化学療法. 2004 Nov;31(12):1969-72.

  No.
158

  08.11.29
第5回がんワクチン療法研究会から−その1
     
 先週22日(土)、東京・秋葉原にて第5回がんワクチン療法研究会が開催されました。この会は、実地の臨床医の立場から、がんワクチン療法をいかに利用すれば効果的かという観点から検討する研究会です。
  (研究会のホームページは → http://www.ascavath.org/ )

 今回の会では、「低用量化学療法」の効果とがん免疫療法との併用例の検討が主題に取り上げられました。

          --------------------------

 最初に今回の学術集会の会長、銀座並木通りクリニック・三好立先生から、

     「銀座並木通りクリニックの治療の紹介と症例提示」

と題する会長講演がありました。

 驚いたのは、最末期のがん症例でも、標準的な投与量の1/10〜1/5という低用量の抗がん剤投与から始め、患者個人個人ごとに最適投与量を微調整すると、それまで急上昇していた腫瘍マーカーの上昇カーブがぴたりと水平になってしまうことでした。「がん休眠療法」です。

 これほどの低用量については、「何じゃそりゃ、効くわけがないだろ」と医師仲間に批判されたということです。しかし、低用量であれば、一般的な抗がん剤につきものの強い副作用は全くといえるほどありません。大病院から見放され、もはや打つ手なしとされたStage IVのがん患者(いわゆる“がん難民”)でも、すぐに元気を回復します。またこれほどの低用量なら、自由診療ベースでも保険診療による標準治療よりも安上がりとなり得ます。

 休眠療法を施行した症例総数89例中、RECIST法評価でCR+PR+SDは46%、1ヶ月以上のSD例を含めて何らかの効果があった症例(ソフトクライテリア評価)が54%となっていました。

 もちろん、この方法ではがんが快方に向かうわけではありません。しかし、誰でもQOLが劇的に向上するのは明らかで、元気を回復した患者は毎週外来に通院し、最後まで通常の生活レベルを維持できます。なかには、亡くなる3日前まで毎週自力で平常どおり通院していたという記録があるそうです。講演ではこのような休眠がん症例が多数示されました。

 この背景には、がん治療におけるフィロソフィーの大転換があります。

 三好先生の治療効果の評価基準はきわめて単純で、治療により「がんに勝つ」か、「負ける」か、「引き分け」か、の3種類です。また、治療目標は標準療法のような勝ち(CR, PR)を目指さず、「引き分けでいいじゃないか」(すなわち、SDで十分だ)というものです。
 
  しかも、ここに「自家がんワクチン」を併用したところ(休眠療法併用9例)中、大型がんの傍大動脈リンパ節メタが9ヶ月間にわたって縮小、明らかなPR症例が1例発生しました。

 すなわち、標準療法から見放された末期がんにおいても、あきらめる必要はなく、「低用量抗がん剤+自家がんワクチン療法」の可能性がまだ残されていることを示す画期的な例です。
     (この症例0621と画像は、弊社ホームページに掲載されています → こちらです

 がん休眠療法は現時点ではエビデンスが十分でないとされ、“効かない”などと一蹴されがちですが、この方法の理論的根拠と、大規模臨床試験による「標準的化学療法に劣らない延命効果がある」という確固たるエビデンスを、今回の教育講演で千葉大・高橋豊先生が示されました。
(この内容はドクター通信の次号−その2−で紹介します) 

 銀座並木通りクリニックでは、癌研にて最先端の抗がん剤開発に長らく従事してきたプロフェッショナルを顧問に迎え、患者一人一人の状態に合わせた抗がん剤の種類と用量選択について、適切な助言を得られる体制を整えています。

 このような「個の医療」体制整備も、SDを超える自家がんワクチンの効果を引き出した成績につながっているものと思われます。

  No.
157

  08.11.20
第5回がんワクチン療法研究会プログラム
     
 第5回がんワクチン療法研究会学術集会が、
  -----------------------------------------
  今週土曜日(22日)午後、
  東京・秋葉原・ビジョンセンター秋葉原
        東京都千代田区神田淡路町2-10-6
        OAK PLAZA 2F
        TEL:03-3526-3944
         (JR秋葉原駅より徒歩5分)
  -----------------------------------------
にて開催されます。
  この会は、がん治療にすぐに役に立つように、がん免疫療法をどう生かしていくかという観点から検討する実地臨床の立場にたった研究会です。

 プログラムは、以下のとおりです。
  臨床の現場において即応用可能ながんワクチンを含む集学的治療法が続々誕生しており、先生方の実地診療にお役に立てると思います。ぜひ、ご参加下さい。

      ********************

13:55-14:00 開会挨拶 三好 立

会長講演  (座長 大野 忠夫)

14:00-14:40
・銀座並木通りクリニックの治療の紹介と症例提示 
  三好 立
    (銀座並木通りクリニック)

教育講演  (座長 三好 立)

14:40-15:15
・がん休眠療法−免疫療法に相性の良い抗癌剤治療−
  高橋 豊
    (千葉大学大学院 医学研究院 がん分子免疫治療学教授)

15:15-15:25 第5回がんワクチン療法研究会総会

15:25-15:35 堀 智勝先生 名誉会長就任のご挨拶

15:35-15:50 コーヒーブレイク

一般演題 1 (座長 古倉 聡)

15:50-16:05
・低用量抗癌剤併用下に自家癌ワクチン療法を施行し3年8ヶ月の無再発を得た進行胃癌の一例
  倉西文仁、新津宏明、中原雅浩、友野勝幸、橋本昌和、藤國宣明、岩子寛、石ア康代、福田敏勝、則行敏生、新津宏明、黒田義則
    (厚生連尾道総合病院外科)

16:05-16:20
・自家腫瘍ワクチンとテモゾロマイドの併用療法で著明な縮小を認めた膠芽腫の1例
  石川栄一1)、室井 愛1)、高野晋吾1)、松村 明1)、坪井康次2)、榎本貴夫3)
(1 筑波大学人間総合科学研究科 脳神経外科、2 筑波大学陽子線医学利用研究センター、3 筑波セントラル病院)

16:20-16:35
・「切除・電子線照射・自家癌ワクチンの併用」が奏効した再発下腿MFH (malignant fibrous histiocytoma) の一例
  轟 健1)、近藤 匡2)、齋藤 保1)、菅原信二3)、森下由紀男4)
    (1 つくばセントラル病院外科、2 筑波大学消化器外科、3 筑波大学放射線治療、4 筑波大学臨床病理)

16:35-16:50
・神経膠芽腫に対する自家腫瘍ワクチン療法の最近の治療経験(仮題)
  丸山 隆志(東京女子医大脳外科、銀座並木通りクリニック)

一般演題 2 (座長 石川 栄一)

16:50-17:10
・自家がんワクチンによる肝癌の再発予防あるいは進展阻止効果についての検討
     古倉 聡1)、松本次弘1)、舟木 準1)、岡山哲也1)、
足立聡子1)、石川 剛1)、内藤裕二1)、中根一樹2)、武田隆久2)、吉川敏一1) 
    (1 京都府立医大, 2 たけだ免疫・遺伝子クリニック)

17:10-17:30
・樹状細胞調整法の工夫と肝癌免疫療法の開発
  中本安成、水腰英四郎、金子周一
    (金沢大学消化器内科)

17:30-17:50
・イヌおよびネコの自然発症腫瘍に対する自家がんワクチンの評価
  岡本芳晴、飯田貴陽、柄 武志、今川智敬、南 三郎
    (鳥取大学農学部獣医学科)

17:50-18:00 閉会挨拶 坪井 康次

18:00-20:00 懇親会

  No.
156

  08.11.17
日本バイオセラピィ学会で進行胃癌症例の発表があります
     
 第21回日本バイオセラピィ学会は、明日18日(火)から19日(水)までの2日間、東京・水道橋の東京ドームホテルで開催されます。

  ここで、進行胃癌に自家がんワクチンを適用し、長期SDを得られた以下の症例報告が行われます。

11月19日(第2日)16:15〜17:00
ワークショップ「がんワクチン療法」

W8-4 低用量抗がん剤併用下自家がんワクチン療法を施行した進行胃癌の一例

  厚生連尾道総合病院、セルメディシン株式会社(2)
新津宏明、倉西文仁、大野忠夫(2)、則行敏生、中原雅浩、福田利勝、石崎康代、岩子寛、藤国宣明、黒田義則
  No.
155

  08.11.11
脳腫瘍の治療効果判定法への提言
     
 今週到着したNature Clinical Practice Oncologyに脳腫瘍の治療効果判定法について、新規提言が総説形式で掲載されています。

 → Sorensen AG, et al, Response criteria for glioma, Nat Clin Practice Oncol 5:634-644, 2008 (doi:10.1038/ncponc1204)

 固形がん治療の一般的効果判定法には、がん画像のクロスセクション計測(最長径と直交する径の積)によるWHO方式から、1方向計測(最長径を採用、各標的病変の最長径の和の変化で評価)によるRECIST法が普及してきており、学会の発表をみても、ほとんどがRECIST法によって定量的な評価がされています。

 → http://www.jcog.jp/doctor/tool/C_150_0010.pdf

 しかし、脳腫瘍では、初回術後の大きな空洞状態が簡単には埋まらず、空洞周囲にそって再発してきた脳腫瘍組織に治療後の変化が起こっても、見かけ上の最長径はほとんど変化を示さないことが多々あります。

 この最長径から空洞部分の長径を引き算して、実質的な再発脳腫瘍部分を表す長さを算出し、RECIST法を適用する方法もありますが、再発腫瘍組織の治療によって、不均一な減少を示す場合は長径だけでは比例的に表せない場合があり、RECIST法では適切な判定がなされないという問題がありました。

 これに対し今回の総説では、MRI画像から腫瘍ボリュームを算出し評価に用いることを推奨しています。また他のマーカーも併用することによって、評価精度を上げられるとしています。

 ちなみに、自家がんワクチンの効果を評価した共同臨床研究論文では、すでに独自に腫瘍ボリューム測定法を採用しており、論文に先んずるASCO2007における発表も好評でした。

 → Ishikawa E, Tsuboi K, Yamamoto T, Muroi A, Enomoto T, Takano S, Matsumura A, Ohno T, A clinical trial of autologous formalin-fixed tumor vaccine for glioblastoma multiforme patients. Cancer Sci., 98(8):1226-1233, 2007.

 →(ASCO2007で発表の「自家がんワクチンの効果」)
    ドクター通信 from セルメディシン No. 93  →→ 弊社にお問い合わせください。

  No.
154

  08.11.04
日本癌学会・癌治療学会の話題から
1.「自家がんワクチン」の肝癌再発予防効果の発表がありました
2.低線量放射線治療の併用について
     
  先週10月28日-11月1日に連続して日本癌学会・日本癌治療学会が名古屋国際会議場で開催されました。そこでの話題を2つお届けします。

1.「自家がんワクチン」の肝癌再発予防効果の発表がありました

 -------------------------------------------------------------
  W18-9  自家がんワクチン療法による肝癌の再発予防および進展阻止
の試み
  古倉 聡1、岡山 哲也1、舟木 準1、松本 次弘1、石川 剛1、半田
修1、高木 智久1、内藤 裕二1、吉田 憲正1、吉川 敏一1、中根 
一樹2、武田 隆久2
  京都府立医科大学 消化器内科1、たけだ免疫遺伝子クリニック2
  -------------------------------------------------------------
の発表が行われ、好評でした。「肝癌切除後、再発予防目的で施行した4例中2例は、治療後3年以上再発を認めていない。再発を認めた2例は、その病変の局所治療後はそれぞれ27カ月、12カ月再再発を認めていない」とのことです。

 この結果は、自家がんワクチンによる術後肝がんの再発予防効果をランダマイズドスタディで示した既発表論文、
(Kuang, M., et al.: Phase II Randomized Trial of Autologous Formalin-Fixed Tumor Vaccine for Postsurgical Recurrence of Hepatocellular Carcinoma. Clin. Cancer Res. 10: 1574-1579, 2004.)
の内容にほぼ合致します。

2.低線量放射線治療の併用について

 がん免疫療法関係のセッションでは、主に抗体療法とペプチドワクチンが取り上げられていましたが、10月31日に開催されたイブニングセミナーでは、阪大・杉山治夫先生のWT-1ペプチドワクチンの効果と、セレンクリニックの岡本正人先生の樹状細胞療法の成績が発表されました。

 特に後者の発表は、単一の免疫療法ではなく、「定位放射線治療+樹状細胞ワクチン腫瘍内局所注射+OK432腫瘍内局所注射」という集学的治療法であるため、樹状細胞ワクチンの効果が判別しがたい状態でしたが、放射線治療の併用により高い局所制御率を示しておりました。

 注目されたのは、定位放射線治療で採用した低線量です。すでに60Gyという最大線量を照射されていた症例であっても、再発部位・転移部位にさらに20Gy〜30Gy程度の追加照射を行ってから免疫療法を施行していました。演者はこれで腫瘍局所におけるがん細胞のapoptosisを誘導でき、それが樹状細胞に取り込まれ抗原提示に至るとしています。

 遠隔転移巣については制御できない症例も多く、全体としては満足すべき成績とはいえませんが、実地診療では一人一人の患者様に対応するベストの治療法の組み合わせを選ぶべきであり、集学的治療法は避けがたいところです。

       -----------------------------------

 弊社の「自家がんワクチン」療法でも、もし放射線治療が併用可能な状態ならば、局所制御率をできるだけ上げるため(すなわち体内の増殖能のあるがん細胞数を極力減少させるため)、症例によっては低線量照射しかできない状態であっても、積極的に併用すべきだと思われます。

 少なくともin vitro実験では、どのようながん細胞株でも4-6GyのX線照射で、コロニー形成能は90%以上失われます(古典的な放射線生物学で示されています)。最悪性の膠芽腫細胞でさえ8Gyも照射すれば、コロニー形成能はほとんど0%になるといわれています。すなわち、大部分のがん細胞が増殖死という状態になり、時間が経つとともにapoptosisまたはnecrosisを起こして細胞死に至ります。

 一方、in vivoでは、放射線感受性が高い腸管でも1回2Gyの分割照射で40Gyまでであればなんとか許容範囲とのことです。20-30Gyの照射線量なら、腹部を含めかなり広範囲のがんに照射可能と思われます。しかも20Gyでもかなり高い率で局所制御が可能です。転移性脳腫瘍の場合にガンマナイフでは定位照射約20Gy(を1回で照射する点が異なりますが)で十分高い局所制御率が得られます。

 もちろん、20-30Gyの低線量分割照射では完全な局所制御は期待できませんが、ここに「自家がんワクチン」療法を加えることによって大部分のapoptosis/necrosisを起こしたがん細胞(いわば、がん抗原の塊)の体内有効利用を図り、誘導細胞性免疫反応による「局所制御+遠隔転移制御」 の可能性の増大を図る方法が考えられます。

 また、もし放射線治療が併用できない場合は、放射線照射に代わる増殖がん細胞数の削減手段を探し、併用していくことが望まれます。


  No.
153

  08.10.27
1.日本癌学会・癌治療学会に商業ブース展示
2.ASCO2009-演題募集開始:抄録〆切は1月6日
     
 1.日本癌学会・癌治療学会にブース展示

 弊社では、今週28日-11月1日に連続して名古屋国際会議場で開催されます、日本癌学会・日本癌治療学会に商業ブース展示を行います。
  ブースの場所は、 国際会議場1号館4F です。

 第67回日本癌学会 → http://www2.convention.co.jp/jca2008/
 第46回日本癌治療学会 → http://www.convention.co.jp/46jsco/

 どうかお気軽にお立ち寄り下さい。

2.ASCO2009-演題募集開始:抄録〆切は1月6日

 米国臨床腫瘍学会2009年大会(ASCO2009、Orlando, Florida、5月29日-6月2日)の抄録募集案内が来ております。2008年(シカゴ)のASCOの参加者数は34000人以上だったそうですので、がん分野では世界最大です。

「自家がんワクチン」関連のご発表であれば、弊社代表取締役がASCO会員であるため、非会員の方の抄録投稿のための会員スポンサーになることができます。

 抄録投稿〆切は、2009年1月6日です。

 詳細はこちらをご覧下さい → http://www.asco.org/annualmeeting

 ASCO2009にてご発表をご希望の先生方は、弊社までご一報願います。

  No.
152

  08.10.23
骨転移患者に対するビスフォスフォネート治療と顎骨壊死のリスク
     

 乳がんおよび前立腺がんでは、骨転移の阻止・治療にビスフォスフォネート治療が推奨されています。
  → http://gsic.jp/cancer/cc_25/mts03/02.html

 しかし、「ビスホス服用者の3割が顎骨壊死の高リスク群」であることが、第41回日本薬剤師会学術大会で発表されました。ビスホス服用者が歯科治療を受ける場合、特に注意する必要があります。
  → http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/200810/508239.html

 日本で販売されているビスフォスフォネート製剤(Bisphosphonates)の一覧はこちらです。
  → http://web1.kcn.jp/ikyu3/myeloma/bisphosphonate.htm

  No.
151

  08.10.01
最新のがん免疫セミナーから
     
 「次世代がん免疫療法における臨床効果と今後の展開」と題するセミナーが9月25日に東大・武田ホールで開催されました。このセミナーは、学会で聞いている先端の話題をまとめて再考するには良い機会でした。

全体の概括とイントロダクションで、三重大・珠玖洋先生により、ヒトがん組織中のkiller T細胞(Teff)/regulatory T細胞(Treg)の比が、臨床での生存率と相関があるとの紹介があり(→ Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Dec 20;102(51):18538-43. Epub 2005 Dec 12)、がん免疫療法においては、Tregの抑制が重要だとの指摘がありました。

 以下は、「基調講演1.制御性T細胞を標的とした癌免疫の可能性について」(京大・坂口志文先生)を聞いた筆者の要約です。間違いがあればご容赦願いますが、すべてマウス実験の成果です。

----------------------------------------------------------------------------------
  がん組織中には末梢血中の存在比よりも多くのTregが入ってきている。Teffが7.6%のとき、Tregは31.5%もあった。Tregは、がん組織中に集まっているのがメジャーポピュレーションである。がんは軽い炎症状態であり、炎症組織に発生するnon-specificなchemokineなどに応答するTregはがんに集まりやすい性質がある。

(筆者注:ヒトTregはケモカインレセプターのCCR4を強く発現、抗CCR4抗体で殺せます)。

 Tregは常時CTLA-4分子を発現。抗CTLA-4抗体全身投与では自己免疫疾患を引き起こすが、これをがん組織中に直接注入すると、がん退縮は起こしても自己免疫疾患は起きない。CTLA-4ノックアウトマウスからCTLA-4欠損Tregを単離すると、その細胞はin vitroでも免疫応答を抑制できない。従って、CTLA-4分子の発現は自己免疫寛容に必須なのではないか。

 抗CTLA-4抗体(blocking作用のある抗体でtumor形成初期に効く)だけではなく抗GITR抗体(agonistic作用のある抗体でTreg特異的、この抗体はtumorが一旦大きくなったときによく効く)をプラスすると強いtumor regressionを惹起し、しかも自己免疫疾患は起きない。抗FR4抗体ではdepleting/blocking抗体で、Treg特異的)、一層強いtumor regressionを誘導できる。

(筆者注:TregとTeffは局所のリンパ球に必須なサイトカインIL-2を奪い合うが、Tregの持つIL-2Rの方がTeffのIL-2Rよりも強いため、TregによるTeffの活性抑制が起こることが判っています。しかしこのメカニズムだけではないようです。CTLA-4、GITR、FR4等の分子がどのような作用をしているのか、興味のあるところです。)
----------------------------------------------------------------------------------

  No.
150

  08.09.24
BioJapan2008に出展します
     
 日本におけるバイオ産業関係の最大の展示会に発展してきた 「BioJapan2008」 は、今年は10月15,16,17日の3日間、横浜の大型展示会場「パシフィコ横浜」で開催されます。

 多数のシンポジウムやノーベル賞受賞者の講演会も予定されていますが、最も重視されているのは実用性のある先端技術を持ち寄り、世界を相手に技術取引をしようという商業展示会です。

 そのため、欧米をはじめ世界各国のバイオクラスターや本邦のバイオクラスター、大学、研究所群も大量に出展します。学会発表とは異なり、実用性のある先端バイオ技術群が今どのような状況にあるかをまとめて知るには非常に良い機会と思います。

 弊社では、この中の「首都圏バイオネットワーク」の一角 (Booth no. B-281) に展示を行いますのでぜひお立ち寄り下さい。展示会の無料チケットは弊社に余分にありますので、必要な方はご遠慮なく当社までメールにてご連絡願います。
                       E-mail:

 BioJapan2008の詳細情報はこちらにあります。
         → http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/

  No.
149

  08.09.11
ネオアジュバント療法前後の乳がん細胞の変化
     
   ネオアジュバント療法が多用される手術対象の乳がんで、療法前後でがん細胞の性質がはっきりと変化することがあるというニュースが、今月4日にASCOを通じて流されています。もとのデータはワシントンDCで開催された2008 Breast Cancer Symposiumで発表されたものです。
  ↓ 
http://www.asco.org/ASCO/News/Cancer+News?&reuterview=detail_view&reutersid=11348

 HER2陽性乳がん(143例)を術前に「trastusumab (Herceptin)+抗がん剤」で治療しますと約半数でCRとなり術後病理診断ではがん細胞が見つかりませんが、CRとならなかった23例中7例(30.4%)では、
HER2-negativeに変化していたそうです。

 上記のようなネオアジュバント療法抵抗性の乳がんの場合でも、術後にがん細胞が組織中に残っていれば、HER2-negativeであっても他のがん抗原は含まれていると推定できます。この利用をぜひお考えいただければ幸いです。

  No.
148

  08.08.26
「がんワクチン療法研究会」の演題申し込み締め切り
     
  第5回がんワクチン療法研究会学術集会が、今年も東京にて開催されます。現在、演題募集中ですが、まもなく〆切となります。

  がんワクチン療法研究会(Association of Cancer Vaccine Therapy (略称:AsCaVaTh))は、平成16年11月20日に設立されました。会則に“がん免疫療法の一つである「がんワクチン」の臨床応用法の開発によ って、がんを征圧することを目的とする。”とありますように、「がんワクチン」の臨床応用法の開発が主体となっている小型の研究会です。

  研究会の事務局は筑波大学陽子線医学利用研究センターにあります。

  大規模な学会できれいに整った内容を発表する場合とは異なり、がん症例の1例1例を大事に検討し、「がんワクチン」を含めた、臨床現場で実際に役立つがん治療法の開発を目指しています。

  「がんワクチン」に関係する発表内容をお持ちの方は、どうか遠慮なくご応募願います。1例報告も歓迎しています。

  応募要領や、抄録の投稿は、こちらからどうぞ。もちろん入会も受け付けています。
   →  http://www.ascavath.org/
  No.
147

  08.08.12
がんワクチンとドセタキセルの併用効果論文
     
 今年のASCO2008でも各種がんワクチンと抗がん剤の併用効果が話題になっていましたが(例えば、ドクター通信 from セルメディシン No. 139の中の#3035→ Ref. 1)、タキサン系抗がん剤は、骨髄抑制を起こすほどの高用量では問題がありますが、意外にも、結果的に免疫反応を刺激する効果があるようです。

 この観点を支持するマウス実験の論文が米国Nat. Cancer Inst.から出ています(Ref. 2)。Garnettらが発表している結論6個のうちの3個は、
--------------------------------------------------------
(d) docetaxel given after vaccination provides optimal enhancement of immune response to recombinant viral vaccines;

(e) docetaxel combined with recombinant viral vaccine is superior to either agent alone at reducing tumor burden; and

(f)docetaxel plus vaccine increases antigen-specific T-cell responses to antigen in the vaccine, as well as to cascade antigens derived from the tumor.
--------------------------------------------------------
というものです。彼らのワクチンはTRICOMというウイルスベースの複雑なものですが、他のワクチンであっても、ドセタキセルの併用効果は類似したものとなるのではないかと考えられます。

 ちなみに、自家がんワクチン治療乳がん症例のうち、ホームページ      http://www.aftvac.com/Mammary-efficacy.htm
にある〔症例0141〕では、40mg/body・週1回3週継続1週休薬という低用量のtaxotereが併用されており、骨シンチで検出される転移巣が激減しています(Ref. 3)。

REFERENCES

1.ASCO2008 abst.#3035 PANVAC vaccine alone or with docetaxel for patients with metastatic breast cancer. M. Mohebtash et al. NCI

2.Charlie T. Garnett, Jeffrey Schlom, andJames W. Hodge: Combination of Docetaxel and RecombinantVaccine Enhances T-Cell Responses and AntitumorActivity: Effects of Docetaxel on Immune Enhancement. Clin Cancer Res 2008;14(11) June 1, 2008.

3.小林豊樹ら、Docetaxel投与後の免疫能に関する検討、日本癌治療学会、口演(333-337) O_63、1999.
(→ http://square.umin.ac.jp/jsco37/abstract/E11224.htm )

  No.
146

  08.08.04
PET診断で白血病薬の効果が1日でわかる
     
 PET診断では、がん組織と周囲の正常組織のイメージ強度の差が明瞭でないと検出しにくいため、固形がんのような塊状態のがん細胞群の検出に使用されます。そのため、血中を流れる白血病細胞をPETで検出するのは難しいと考えられていました。

 白血病の場合、抗がん剤が有効か否かの判定に、骨髄穿刺による病理診断が汎用されていますが、これをPET診断に代えると、抗がん剤投与開始後1日で効果の有無がわかるとのニュースが出ています。

 骨髄で、FLT PET画像のムラの程度を判定に利用、抗がん剤が効けばムラが変化するのがキーポイントとのことです。

 → http://www.reuters.com/article/healthNews/
idUSCOL96338720080729?feedType=RSS&feedName=healthNews

  No.
145

  08.07.28
医療モバイルサービスに規制緩和
     
  この7月10日より、CT車、MRI車、PET車等の病院向け医療モバイルサービスに関して規制緩和が行われました。
  このニュースは「ドクターネット メールマガジンサービス」 <http://www.doctor-net.co.jp/>を通じてもたらされたものです。

 周知のようにCT, MRI, PET等はうっかり導入すると病院経営を傾けるといわれるほどの非常に高額な診断機器です。欧米では車載化されたものがかなり普及していますが、本邦では、病院施設構造の変更届けの手続きが煩雑で、ほとんどが院内設置の据え置き型になっています。

 今回の規制緩和によって、中小規模の病院でも高額医療装置を医療モバイルとして共同利用することにより、設備投資を行わずに高度医療が行う事が可能となりました。

 患者様にとっては、より生活の場に近い医療機関で、大病院の混雑を避けて受診できるという福音となります。がん治療の現場にもやがて大きな影響となって現れることと思われます。

 詳細は、→ http://www.freeill.co.jp/pdf/press_080711.pdf

に出ています。

  No.
144

  08.07.23
J Clin Oncolのインパクトファクター
     
 米国臨床腫瘍学会(ASCO)の学会誌Journal of Clinical Oncology (JCO)の2007年のインパクトファクター(IF)が15.484に増加したとニュースが出ています(Ref. 1)。その前のIFは13.598でしたから、かなりの増加と言えます。Oncology分野の学術誌では世界5位だそうです。

 ご存知のように、学術雑誌のIFは、その学術誌に掲載された論文が平均して何回他者の論文に引用されているかを表すだけのもので、論文自体の重要性をストレートに表すとは限りませんが、その学術誌の影響力を著す良い指標とされています。

 米国はもちろん、本邦でも最近は論文自体の内容よりもこのIF値によって評価が決まる傾向が強く(内容が専門的すぎて真の価値が理解できなくても数値で簡単に比較できるためでしょう)、次の段階の研究費の獲得、および研究者の昇進が決まるといって過言ではない状態になっています。

 また、米国では、新規抗がん剤の論文がJCOやLANCETに掲載されれば、FDAにおける治験審査の扱いが優遇される等の措置があり、IFがJCO以上の学術誌に臨床の論文を掲載するのが一つの目標になっているほどです。

 それに引き換え、本邦のがん関係の学術誌のIFが低すぎるのが気になります。本邦最高のCancer Science誌でも3.869(2006年)です。残念ながら一国の文化力がここにも反映していると思われます。

REFERNCE

1. ASCO E-News, 2008.7.22, JCO Impact Factor Increases to 15.484 from 13.598.

  No.
143

  08.07.16
腫瘍血管新生阻害による臨床効果を表すバイオマーカーがない
       
最近、分子標的薬で腫瘍血管新生阻害作用を示すものが相次いでFDAで承認されています。それらは、
  Bevacizumab (Avastin, target=VEGF)
  Sorafenib (Nexavar, target=VEGFRs, PDGFRa/b, c-KIT, FLT-3, Raf)
  Sunitinib (Sutent, target=VEGFRs, PDGFRb, c-KIT, FLT-3, c-RET)
  Temsirolimus (Torisel, mTOR)
の4種で、この他にも多数の候補物質が検討されています。

 これらは、たしかにprogression-free survival, overall survival, overall response rateをend pointにしたPhase III臨床試験で有効性が 証明されています。

 しかし、不思議なことに、これらの医薬品によって確かに腫瘍血管の機能が阻害されたことによる臨床効果であることを示す明瞭なバイオマーカーが示されていないのです。

 Antiangiogenic therapyと称しているものの本当にそうなのか、「血管新生阻害作用」とは、新薬発見のための単なる道具なのか、それとも新薬の単なるお飾り題目なのか、という皮肉たっぷりの表題がついた総説論文がNature Clin Practice Oncologyの今月号に出ています。

REFERENCE

1. Sessa C, Guibal A, DelConte G, Ruegg C: Biomarkers of angiogenesis for the development of antiangiogenc therapies in oncology: tools or decorations? Nature Clin Practice Oncol. 5, 378-391, 2008.

  No.
142

  08.07.09
基盤的癌免疫研究会の話題から--その2
     

 7月2-3日に大宮ソニックシティで、表記の研究会が開催されました。前号No. 141に続いてお送りします。

 以下は、筆者の印象に残った演題です。

-------------------------------------

「ワークショップ:癌ワクチン療法の標準化を目指して」から

●NY-ESO-1癌ワクチン療法第一相臨床試験におけるモニタリング結果と臨床反応
(阪大・和田尚ら)

 CHP-NY-ESO-1ワクチンで、7/8例に抗体価上昇、NY-ESO-1反応性CD4、CD8の増加を認めている。これでモニタリング成功かというとそうではない。ワクチン終了後に組織摘出ができた4例中、「早期に腫瘍増殖、その後縮小」した食道癌1例でも、壊死と増殖を示す組織が混在しており、結果的に再発。この1例以外には腫瘍縮小という明らかな臨床効果を示した例はない。SD例が多いが、それをどうモニタリングで見分けるかが難しい。
  フロアから、「CD45RO+をTIL中で測定すべきだ。OSとの相関があるという論文が出ている」とのコメントがあったが、TILが取れるほどの癌組織量となると、手術が必要であり、ほとんどの症例では無理ではないか。血液モニタリングで済ます方法が開発されないと使いやすいモニタリング方法にならないようだ。

●MVAC耐性進行・再発膀胱癌に対するテーラーメイド癌ペプチドワクチン療法の経験
(北里大・松本和将ら)
  MVACと放射線治療では、膀胱癌が消えることは稀。これで増殖してきた耐性症例に、MVAC+ペプチドワクチン療法(1クールは12回/12週)を行ったもの。4例中CR1、PR1が出ている。一旦悪化し、その後縮小に転じている。少数例の研究だが「ワクチン+抗癌剤」で併用効果があることを示している。

●消化器癌に対するWT1ペプチドワクチン療法の現状と将来に向けての方向性
(阪大・西田純幸ら)
  標準療法耐性の大腸がんを対象に、週1回、12回を1クールとしているワクチン療法。SDが5/15例で出ている。CR, PRはない。なおDTH反応を見ており、陽転例では有意にSDになっている。

     DTH(+)例 DTH(-)例
  SD   6      0
  PD   1      8
    χ^2検定でp=0.0007

 膵臓がんでは、WT1ワクチン+Gemcitabine併用で1/4例で効果が出ていた。これは今後、自家がんワクチンでも検討する価値がある。

-------------------------------------

一般演題から

●放射線照射で誘導される癌特異的CTLを用いた新規免疫治療法の開発
(北海道大学)武島嗣英、西村孝司ほか
  放射線治療(RT)による腫瘍特異的CTLの誘導についてマウスで検討。RTにより、腫瘍特異的CTLの誘導がみられたが、リンパ球中のCD8を除去したり、所属リンパ節を除去すると腫瘍増殖の抑制が落ちることから、CD8分画と所属リンパ節が重要であると考えられる。ただし、TregはRTに耐性で照射後の回復も早いとの考察もあった。

-------------------------------------

  No.
141

  08.07.07
基盤的癌免疫研究会の話題から--その1
     

 7月2-3日に大宮ソニックシティで、表記の研究会が開催されました。この会は、とかくウサンクサイとのイメージが先行していた腫瘍免疫反応を分子機構から解明し、科学的な基盤に立ったがん免疫療法の開発を行うべく、1996年に設立された研究会です。この会での議論は非常に活発で、いまだかつて討論時間が守られたことがないという特徴があります。来年度からは、日本癌免疫学会に衣替えする予定です。

 今年の会では目玉として、「シンポジウム:ここまで進んだ抗体のトランスレーショナルリサーチ、臨床応用」、「ワークショップ:癌ワクチン療法の標準化を目指して」が開催されました。そのうち、以下は、シンポジウムから印象に残った話題です。

●ヒト化CD26抗体を用いた悪性中皮腫及び同種・骨髄移植後のGVHDに対するTR研究
  (東大医科研・森本幾夫)

 CD26がT細胞上に発現しており、β1インテグリンとコラーゲン受容体であることによる治療用抗体を開発中。この抗体が骨髄移植で起こるGVHDを抑制できることを重度免疫不全のNOGマウスで示しているが、今回の発表のキーポイントは、CD26が付着性のヒト悪性中皮腫細胞に発現していて、反応性炎症細胞には発現していないことを発見したことにある。中皮腫治療とT細胞毒性が両立するのか、あやうさを感じないでもなく、今後の臨床効果に注目したい。

●抗CCR4抗体 “ベンチからベッドサイドへ”
  (名古屋市立大・石田高司、上田龍三)

 上田研では長年にわたって成人T細胞性白血病ATLLの研究を行ってきたが、ATLL細胞の表面にCCR4の特異的発現を発見した。しかもCCR4は制御性T細胞Tregに特異的に発現していることから、ATLLはTregが癌化したものだと判明している。
  抗CCR4抗体を脱フコース化した抗体は治験phase Iで強烈な効果を示し、0.1mg/kgという少量の1回注射で、ATLL患者末梢血から一夜にしてATLLをほとんど除去、繰り返し注射で容易に完全寛解に導入していた。脱フコース化抗体の威力は大きく、今後、急激に脱フコース化抗体が普及すると考えられる。

●ヒト化抗IL-6レセプター抗体の癌治療への応用
  (阪大・吉崎和幸)

 阪大・岸本忠三先生発見のIL-6がミエローマの増殖因子であることから、レセプターを塞ぐ抗体・抗IL-6R抗体を開発したもの。多発性骨髄腫に適用したが、一過性の効果にとどまり成功はしていない。しかし、IL-6が炎症性因子の一つで発熱、倦怠、食欲不振を誘導するため、キャッスルマン病(IL-6異常産生を起こす極めて稀なリンパ増殖性の疾患で、症状としてダルさが顕著)に適用し、解熱・倦怠感改善に成功した。関節リウマチにも適用を拡大している。
  癌終末期の悪液質状態では、IL-6レベルの上昇が見られるが、この抗体でヌードマウスの悪液質(体重減少で簡単に計れる)の改善が可能なことを見出した。
  この抗体はトシリズマブ(商品名アクテムラ)として2005年4月11日に承認、中外製薬から販売されている。適用外だが、悪液質に陥ったがん患者にこの抗体を使用すれば、一過性にせよQOLの改善(倦怠、食欲不振)が見込めると推定していた。

  No.
140

  08.06.25
オンラインセカンドオピニオン--米国の現状
     

 米国の大型新聞USA TODAY紙のホームページに、“Online services let patients seek a second opinion from home”という記事が掲載さ れています。

 → http://www.usatoday.com/news/health/2008-06-22-online-second-opinions_N.htm?loc=interstitialskip

 がん患者が自分の診療データを自宅から遠隔地の医師に送りセカンドオピニオンを求めることができる有料サービスが米国では急速に広がっ ているとのことです(例えば、Partners Online Specialty Consultations (POSC)など)。

 費用は1回$500 から $1,500ですが、3大サービス業者は、the Cleveland Clinic, Johns Hopkins Medicine and POSCで、年間各々約1,000 件を扱うとのことです。

 しかも、“およそ5%の症例で診断を変更し、85% から 90% の症例では治療法を変更する”、とe-Cleveland Clinicのマネージングディレク ターの話として掲載されています。

 普及のネックになっているのは、米国のほとんどの保険会社がこのようなリモートセカンドオピニオンを保険対象にしていない点ですが、この事情にも大手保険会社が対応すると宣言していますのでまもなく変化しそうです。

 振り返って本邦ではどうかといいますと、カルテ情報は個人情報の塊ですので、セキュリティの点でどう扱うかが問題かと思います。また、本邦では電子カルテの形式がバラバラなのと普及不十分である点が気になります。

 しかし、それ以上に、病院間において、セカンドオピニオンやカルテ情報を積極的に相互利用しようという環境の醸成がなかなか困難な課題ではないかと思われます

  No.
139

  08.06.20
米国臨床腫瘍学会(ASCO2008)から-3
     

 前回のドクター通信:(ASCO2008)から-1、-2に引き続きお送りします。今回は、一般演題から見つけ出した、がんワクチンと抗がん剤との併用研究の特集です。

 自家がんワクチンも含め、従来は、免疫刺激剤と化学療法剤との併用は禁忌と一般的に考えられてきました。免疫担当細胞の増殖を化学療法剤が阻害するからです。しかし、臨床研究でも、動物実験でも、併用した方が成績が良いという報告が出始めております。

 まだ、大規模臨床試験ではなく、断言はできかねますが、がんワクチンによって体内誘導される免疫反応においても、化学療法剤を注意深く使えば、併用した方がかえって有利になる場合がありそうです。

****************************************************************

#3035 PANVAC vaccine alone or with docetaxel for patients with metastatic breast cancer. M. Mohebtash et al. NCI

 PANVACワクチン;癌抗原のMUC1とCEA、アジュバント作用のあるB7.1、ICAM-1、LFA-3を組み込んだリコンビナントpox-virusワクチン。転移乳癌で本ワクチン単独およびワクチン+タキソテール併用の効果を比較。
  タキソテールの用量は、
   35mg/m^2 weekly×3(通常の用量は60mg/m^2/3-4 weeks)。
  臨床効果;
   ワクチン単独群 3/16=23%
    (脊椎転移巣の縮小+痛み軽減、肝転移巣、RECIST基準でPR)。
   ワクチン+タキソテール群 5/6=83%
    (RECIST基準でPR、胸壁転移巣径50%縮小、
     骨転移巣の12ヶ月間改善、19ヶ月間DFS)。

結論;ワクチン単独、ワクチン+タキソテールのどちらでも効果が認められ、特に併用では良い結果でした(しかし、症例数が少なく、検証のための追加症例が必要)。

#3049 LPS activated DC vaccine in combination with immunomodulatory dose of cyclophosphamide in patients with stage 4 melanoma: Preliminary report from the phase 1/2a clinical trial. A.K.Palucka et al. Baylor Inst. for Immu. Res., Dallas.

 Autologous DCワクチン;死滅allogeneicメラノーマ細胞をLPS存在下にて患者DCに接触。
  患者;Stage4のメラノーマ、300mg/m^2のサイクロフォスファミド(通常は500mg/m2を3週毎)とDCワクチンを投与。
  結果:これまで3例登録、安全性上の問題は見られていない。1名でRECIST基準でPR。

#3060 Effect of vaccination on immune and clinical response in glioblastoma multiform patients. C.J.Wheeler et al. Cedars-Sinai Medical Center, LA

 ワクチン;900mgの自己腫瘍lysateを10-40×10^6 cellsの自己DCに添加。
  患者;GBM患者34名、術後15週からDCワクチンを3回(2週間隔)、6週後に1回。
  結果;IFN-γ産生がワクチン前より1.5倍以上に増加した症例をresponder (18名)、それ以下をnon-responder(16名)に分け、生存を比較。Median Survivalはres群642日、non-res群430d(p=0.041)。
  この内23名はワクチン後の再発に化療(テモゾロマイド)追加。
  ワクチン治療後TTP(テモゾロ開始まで)=195±24日
  テモゾロ開始後TTS=383±64日

(術後15週=105日後からワクチン開始、ワクチン期間平均195日、その後の化療期間383日を通算すれば683日;約1.9年となる。)

 有効症例として、術後187日にワクチン治療増悪、その後化療で術後745日(化療後558日後)にCR。
  また、ワクチン前化療とワクチン後化療とのTTP比較では、後者が優れていました。これはワクチンによりがん細胞の化療感受性が高まったのではないかと推察されます。

#3064 Treg depletion by low-dose temozolomide.
A.F. Carpentier et al. Hopital Avicenne, Paris, Fr.

 実験モデル;グリオーマ細胞(RG2)を皮下移植したラットにテモゾロマイド30mg/kg/day (=90mg/m^2/day)で5日間、10mg/kg/dayで21日間経口投与、2mg/kg/d(=6mg/m^2/d)および0.5mg/kg/d(=105mg/m2/d)で21日間(参考:ヒトでは75mg/m^2/dを42日間)。

 結果;
   テモゾロ非投与時の脾臓中Treg%
   ------------------------------------------------
   担癌 18.9±4.6、 非担癌 14.2±4.0

  テモゾロ投与時のTreg %
   ------------------------------------------------
   用量     Treg%      p  
   ------------------------------------------------
  Control 18.9±4.6
   0.5mg/kg 12.7±1.7    <0.01
  2mg/kg    14.4±3.2    <0.05
  10mg/kg 18.5±4.7   0.77
  30mg/kg 16.5±3.0   0.43
   ------------------------------------------------
  テモゾロマイド低用量では、Tregの割合が減少しています。

  No.
138

 

08.06.13

米国臨床腫瘍学会(ASCO2008)から-2
       前回のドクター通信:(ASCO2008)から-1に引き続きお送りします。

1.教育講演「免疫治療臨床試験におけるデザインと規制について」から
  Educational Session:“Endopoints for immunotherapy studies:
  Design and regulatory implications”

 Bristol-Myers SquibbのA. Hoosは以下のように述べています。
----------------------------------------------------------------
  免疫治療は化学療法とは異なる生物反応に基づく治療法であることか
ら、ワクチン治療反応を明確に反映する評価基準の確立が必要である。
  バイオマーカーとしては多様なT-cell反応性が候補であるが、未だ確
立されたものがなく、今後評価法の向上および汎化が必要である。抗腫
瘍活性評価については、これまでの化学療法とは違った反応パターン(一
旦増殖後縮小、新病変出現後縮小、長時間不変後縮小など)が予想され、
それに沿った免疫学的評価基準(Immune-related Response Criteria;
irRC)の設定が必要である。特に、生存曲線解析については、(化療剤の
ように治療開始直後から治療群と対照群の曲線が分かれるのではなく)
ある期間経過後に生存曲線が分かれ始めると予想されるため、これまで
と違った解析法が必要となる。
  ワクチンを開発する場合には、以上の観点を踏まえた新しい開発手法
の開拓が求められる。
----------------------------------------------------------------

 また、National Cancer Instituteの J. Schlom は、
----------------------------------------------------------------
  ワクチン治療と他の治療との差別化が必要であり、その差別化をどの
ように臨床試験に反映させるか、他療法との併用治療をどのように最適
化するかが重要であるとしています。
  特に、併用治療については事前の放射線化療は免疫機能に悪影響を及
ぼすという常識がありましたが、放射線化学療法や分子標的薬剤などに
よる治療は、その後のワクチン治療に良い併用効果をもたらすことがあ
ります。
  事例として前立腺癌においてPSAワクチン(PSA-TRICOM)後タキソテール
投与は、タキソテール単独より優位に全生存率(OS)が上回ることを報
告しています。
  この機作として、化療により癌細胞に変化が生じT細胞感受性が高まる、
癌細胞壊死により特異抗原が放出されブースター効果があらわれる、Treg
などの免疫抑制作用が除かれる、などが考えられているとのことです。
----------------------------------------------------------------

 CBER/FDA のC. Witten は、米国の規制当局の立場から次のように講演していました。
----------------------------------------------------------------
  ワクチンにはAntigen/adjuvant vaccine, Whole cell cancer vaccine,
Dendritic cell (DC) vaccine, Viral vector and DNA vaccine, およ
びIdiotype vaccineがあり、これらの癌ワクチン開発はCBER のOffice
of Cellular, Tissue, and Gene Therapyが管掌している。
  ワクチン製造に関する留意事項として、製造ロット間の純度同一性や
安定性、製剤中の全成分(細胞、アジュバントなど)の品質保証、最終製
剤の品質および無菌性、活性物質の本体及び活性があげられる。
  早期臨床試験では、化療剤でのMTD(最大耐量; Maximum tolerance dose)
的な用量は通常求め難いので、薬理学的有効用量あるいは生物学的最適
用量をそれに代える。
  Pivotalな臨床試験においては、化療剤の考えかたとの相違点として、
(根治手術後などの)残存癌が無い(少ない)患者が好対象、blind study
が望ましい、癌巣の縮小を伴わない抗腫瘍活性が見られる、効果発現ま
でに時間がかかることなどがあげられる。
----------------------------------------------------------------

2.ASCO-ECCO合同シンポジウム:
“How can we overcome difficulties of
clinical vaccine development in oncology”から

 H Lee Moffitt Cancer Ceterの J. Weber は、
  求められるべき効果は、転移癌に対する有効性、ランダマイズド試験での生存期間延長、腫瘍特異免疫と臨床パラメーターとの相関などだが証明できるかが問題であると述べた上で、
----------------------------------------------------------------
  これまでの臨床試験の結果では、ワクチンと特異免疫と無再発生存と
の間の相関は小さいものの、Stage4のメラノーマではDC誘導免疫とOSに
関連が見られた。
  今後の臨床試験においては、癌組織内のTregおよびEffector T/Treg比、
Myeloid suppressor cellの活性などが留意点として考えられる。
----------------------------------------------------------------
と言っておりました。

  No.
137

 

08.06.10

米国臨床腫瘍学会(ASCO2008)から-1
       昨年に引き続き本年のASCOも、先週、シカゴ/マコーミックプレイスで開催されました。同プレイスは昨年までのEast, South, Northのビルに加えて本年はWestビルが新築追加され、ますます広大な会議場となっておりました。本年度の参加者は4万人近くになったものと思われます。

 今年の目立った印象は、免疫治療、中でもがんワクチン治療に関する演題が多く見られ、「vaccine」のキーワードで67演題が検索されています。

 さらにSpecial Sessionで “How can we overcome difficulties of clinical vaccine development in oncology”、Educational Sessionで “Endopoints for immunotherapy studies: Design and regulatory implications” とワクチン開発上の問題点および効果の評価法に関する特別セッションが2つあり、学会や規制当局も、がんワクチンの基礎検討レベルから臨床応用という動きを無視できなくなってきたものと推察されました。

 また、ASCO開催期間中は、前日のハイライトをASCO daily newsとして速報新聞的なものが発行されますが、本年からは英語以外の言語としては初めて日本語版が発行されました。ASCOに参加する日本人が大きな割合を占めてきたことを表しているためと思われます。

 今回、がんワクチン開発における独自の評価方法(ワクチン効果は、緩やかに、長期間にわたって現れることから、RECISTのような従来の化療剤の評価法では評価困難)についての提言がありましたので、その内容の要約を次回にお知らせします。

  No.
136

 

08.06.02

選択肢が多数あることを患者様に知らせるには
     

 先週、あるがん患者様のご家族から弊社への質問メールの中に、

 「このままの状態では、余命は最悪の場合3ヶ月とも言われております。」と述べられた後に、

       ---------------------------------------
  癌で苦しんでる患者は長年死との恐怖と闘っております。その姿を私
達家族は励ます事しか出来ず、こうして他の治療法を必死で探す術しか
ありません。それぞれの病院ではその病院で持ってる最善の治療をして
下さってる事は十分承知しておりますが、今回、ネットで調べてみると
研究半ばではあると思いますが選択肢は沢山ある事を知りました。
  この選択肢を情報として主治医は患者に知らせて下さってもいいので
はないでしょうか…と、思ってしまいました。
  全国各地何処に住んでいても公平な医療が受けられる医療会のネット
ワーク作り、患者中心の考え方で再編される事を希望致します。
        ---------------------------------------

と記述されておられました。

 上述のような「3ヶ月宣言」だけで患者様を放り出す病院はまだ非常に多いと思います。

 この通信をお読みの先生方は、もちろん保険外の診療方法が多数あることをご承知のことと思います。しかし周囲の先生方はどのようにお考えでしょうか。

 その情報をお知らせする「適切なタイミング」はなかなか判断の難しいところかとは思いますが、保険外の診療方法とその情報があることを、周囲の先生方にも前向きに活用していただくようにするにはどうすればよいか、お智恵を弊社に賜りますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。

  No.
135

 

08.05.26

米国の脳腫瘍治療の現状:ケネディ上院議員の診断をきっかけに
     

   5月23日のASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)を通じたロイター通信のニュースに、米国の脳腫瘍治療の現状が報道されています。

 これはEdward Kennedy上院議員(マサチュセッツ州)が、つい最近脳腫瘍と診断されたことをきっかけに議論されているものです。

 米国でも悪性神経膠芽腫(Grade IV)の標準治療法は、「手術+放射線治療(6週間、計60Gy)+temozolomide(商品名テモダール、通常6ヶ月以上)」となっています。これで初回手術後の生存期間は14.5ヶ月(中央値)ですが、temozolomideの効果が失われて増悪してくると、もはや打つ手がないとされています。

 まもなくFDAがbevacizumab(商品名アバスチン)を再発脳腫瘍に対して認可する見込みで、これによる更なる延命効果が期待されていますがそれほど大幅ではないとされています。また、手術時に埋め込むGliadel Wafer(Guilford Pharmaceuticals,Inc)もありますが、やはりそれほどの延命効果が期待できるわけではありません。

 その点は、ロイター通信で“"There have been some advances in the treatment of this disease. I'm impatient for more. And I really feel that the advances we've had have been small, baby steps," Dr. Otis Brawley, chief medical officer of the American Cancer Society, said in a telephone interview on Wednesday.”
と述べられていることから、容易に考えられると思います。

 新しい治療法として期待されているのが、数種の「がんワクチン」です。しかし米国ではまだ実験段階と認識されているため、全く普及はしていません。

 米国では脳腫瘍に毎年22,000人が罹患し13,000人が死亡するとされており、このような状況からすると、米国の脳腫瘍患者の現状はたいへん厳しいと思われます。

 しかし、わが国では、国の未承認医薬品も使用可能な自由診療制度があるため、弊社の「自家がんワクチン」が既に市場化されております。

 「自家がんワクチン」を組み入れた再発例を含む悪性神経膠芽腫12例の治療成績では、初回手術後の生存期間中央値が24ヶ月と長期化しています(Ref. 1)。うち、1例はCRとなり長期生存中です。

 詳しくは、こちらをご覧下さい。
  → http://www.aftvac.com/vaccine2-efficacy-brain.htm

REFERNCE

1.Ishikawa, Eiichi; Tsuboi, Koji; Yamamoto, Tetsuya; Muroi, Ai; Enomoto, Takao; Takano, Shingo; Matsumura, Akira; Ohno, Tadao: A clinical trial of autologous formalin-fixed tumor vaccine for glioblastoma multiforme patients. Cancer Sci., 98(8):1226-1233, 2007.

  No.
134

  08.05.22
銀座並木通りクリニックでは患者様のために勉強会を開催します
     

  先生方にとっては日常の診療が忙しい中、がん患者様とご家族のために、目前の症状や治療法以外の関連治療法等について、詳細な説明の時間を取るのはなかなか難しい場合もあろうかと思います。

 銀座並木通りクリニック(院長・三好立先生)では、がん患者様とご家族のために、「最新の脳腫瘍治療法」と「体にやさしい抗がん剤治療法」について、わかりやすく解説する勉強会を開く予定です。

 もし、先生方の患者様やそのご家族で、参加ご希望の方がおられましたらご案内いただければ幸いです。

 詳しくはこちらです。
  → http://www.aftvac.com/hospitals/AFTV-seminar-GINZA-1.pdf

 日時:7月5日(土) 14:00〜
  会場:東京・銀座並木通りクリニック
  〒104-0061 東京都中央区銀座4-2-2 第1弥生ビル 7F
  【東京メトロ銀座駅(丸ノ内線・銀座線・日比谷線)C8出口直結、
   JR有楽町駅銀座口より徒歩4分】

  (ご注意) 参加申し込み多数の場合は、会場が変更されることがあります。必ずキャンサーフリートピア事務局にご確認下さい。

 参加費: 無料(要・予約)

 申し込み・問い合わせ: キャンサーフリートピア事務局
   TEL: 03-3562-7775
   E-mail: cftopia@cftopia.com

  No.
133

  08.05.08
固定した血管内皮細胞ががんワクチンになるならば
     

   「輸血・細胞治療学会、東大輸血部の津野助教、細胞ワクチンを用いた抗血管新生療法が再発悪性脳腫瘍に有効と報告」と題され、4月28日のBiotechnology Japanのオンラインニュースに掲載されましたので、ご記憶の方もおられるかと思います。

 この材料となった細胞は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をグルタールアルデヒドで固定したもので、腫瘍細胞ではなく正常細胞です(Ref. 1)。正常細胞を抗原にすることで惹起した抗血管新生療法が脳腫瘍に 有効というわけですが、もしそうならば、当社の「自家がんワクチン」には、がん組織内の新生血管もそのまま含まれていますので、それも結果的に抗血管新生効果をもたらしている可能性があると考えることができます。

 当社からのドクター通信 from セルメディシンNo. 55 (2006.07.19)では、「がん細胞本体の脇を攻める」との表題で、がん組織中の線維芽細胞に特徴的な分子Fibroblast activation protein (FAP)がワクチンの抗原となることを指摘しました。メラノーマの特異的抗原を負荷した樹状細胞ワクチンと併用すると、それぞれ単独では見られない強い腫瘍拒絶効果を発揮するとの論文が出ています(Ref. 2)。

 もちろん証明はまだ出来ていませんが、理論的には、「自家がんワクチンは、がん組織内のがん抗原とともに、がん組織に特徴的な正常細胞由来の抗原まで無駄なく利用しており、両者の抗原があいまって治療効果を発揮している」と想定することが可能です。

 一つの考察として、参考にしていただければ幸いです。

REFERENCE

1. Okaji Y, et al., Pilot study of anti-angiogenic vaccine
using fixed whole endothelium in patients with progressive
malignancy after failure of conventional therapy. Euro. J.
Cancer 44: 383-390, 2008.

2. Lee J, et al., Tumor immunotherapy targeting fibroblast activation protein, a product expressed in tumor-associated fibroblasts. Cancer Res. 65:11156-63, 2005.

  No.
132

  08.05.07
米国癌学会2008のトピックスから -その3-
     

 今年の4月12-16日に、サンディエゴで開催された米国癌学会(AACR2008)で出ていた話題から、がん免疫療法関係について、-その1- に続けてお届けします。
  REFERENCEは、abstract CD-ROMからの引用です。ただし、シンポジウム (#SY番号のシリーズ)ではabstractを提出していないという例が多数あ りました。

(5) ペプチドワクチンではescape cloneの発生は避けられない ?!

 正常細胞では、細胞分裂の際、染色体のテロメア部分のDNA配列がだんだん短くなっていくことが細胞老化現象の一つとして知られています。そのDNA配列を伸長する酵素がテロメラーゼで、がん細胞では活性が非常に高いという特徴があります。これに目をつけ、テロメラーゼのERT572y, TERT572を用いた9merペプチドワクチンVx-001を作成、臨床投与した成績が報告されました。

 このワクチンは、各種のがん90例(30例は肺癌)のうち、IFNg ELISPOT assayで79%の症例が(+)になるほど抗原性の強いワクチンで、%survival でみるとp=0.048となっていましたが、Kaplan-Meyerカーブの末尾は対照群のカーブと交差していて、最終的な生存率は同率になっていました。

 結局、特定のペプチドを抗原とするワクチンでは、いくら抗原性の高いぺプチドを選んでも、がん細胞側のescape cloneの発生は避けられず、患者は死亡に至るというデータと思われます。

             **********

 ペプチド合成で安価に作成でき、大量の抗原を提供できるるのがペプチドワクチンの特徴ですが、投与できる抗原ペプチドの種類はどうしても限定されてしまい、カバーできる抗原ペプチドの範囲に“漏れ”が生じます。

 一方、当該患者のがん組織自体を抗原原料としているため、抗原提示細胞内でその患者特有の「未知のがん抗原ペプチド」をも作らせることができるのが、「自家がんワクチン」の特徴です。ペプチドワクチンと組み合わせて、体内に提供するがん抗原ペプチドの種類に、できる限り“漏れ”がないようにするのも今後の課題の一つと思われます。

REFERENCE

1. #2541 Immune responses in cancer patients after vaccination with the therapeutic telomerase-specific vaccine Vx-001. E.K Vetsika1, et al., University of Crete, Heraklion, Greece

(6) AACR内にCancer Immunology Working Groupが発足

 今回のAACRでは、4月14日の夜に、2007年にAACR内に立ち上げたCancer Immunology Working GroupのTown Meetingがありました。

 発足の趣旨は、AACR内でCancer Immunologyの研究をもっと強化しようと
いうものです。その活動第1弾はすでに行われいて、NCI Immunotherapy Workshop
という形で結実しています。
  → http://web.ncifcrf.gov/research/brb/workshops.asp

 その内容は、
----------------------
ワクチン開発は多種多様すぎて相互比較ができない。これに使われている
アジュバントはバラエティに富んでいるがその開発については、
  FDA: not effective as monotherapy
  Industry: invisible hand of the market
ということで誰もやらない。「Why aren’t adjuvants available?」とい
う疑問から、NCIのWeb siteで募集したら124種もアジュバント候補物質が
挙げられ、どれが優れているかわからない。そこでJuly 12, 2007に
Workshopをやって、商業化しているものを除いて参加者で投票しranked list
を作った。このリストの上から順に使い、どのアジュバントがいいか、各
自データを出し、学会で比較討論して、使いやすい優れたアジュバントを
決めて製品化を促進しようじゃないか
----------------------
というものです。

 しかし、既存の有力なアジュバント:Monophophoryl lipid A、
抗CTLA-4抗体、GM-CSF、INFg等は商品化されている(か、されつつある)
ため、このリストからは除外されています。

REFERENCE

1. 4/14 Minisymposia: Clinical Research 9. Report of the NCI Immunotherapy Agent Workshop to develop a ranked list of agents with high potential for use in treating cancer. Martin A. Cheever (no abst.)

  No.
131

  08.05.01
米国癌学会2008のトピックスから -その2-
     

  今年の4月12-16日に、サンディエゴで開催された米国癌学会(AACR2008)で出ていた話題から、がん免疫療法関係について、-その1- に続けてお届けします。
  REFERENCEは、abstract CD-ROMからの引用です。ただし、シンポジウム (#SY番号のシリーズ)ではabstractを提出していないという例が多数あ りました。

(3) 非小細胞性肺がんでもがん組織中のMemory T cells (CD45RO-high)
陽性の患者の方が長生きする

 -その1-に記載した(1)の胃癌、食道癌の場合と同様に、非小細胞性肺
がん組織中のMemory T cells (CD45RO-high)陽性の患者の方が、
CD45RO-lowの患者よりも長生きする(p<0.00….1)というものです
(Ref. 1)。

 しかもrelapse tumorではfoxp3+の制御性T細胞(Treg)は特に増えて
いないそうです。

 J. Clin. Oncol. in press.とスライド表示されていましたので、まも
なく出版されることと思います。

 大腸癌(Galon J et al. Science 313: 1960-1964, 2006)に続いて、
これだけの癌種で、がん局所へのリンパ球浸潤が予後を占うとなります
と、どの癌でもあり得る一般的反応だと推定され、がん治療においても
生体防御機構の保全・活性化は非常に重要だと思われます。

REFERENCE

1. #SY03-02 Shaping of an efficient immune microenvironment in human cancer. Wolf H. Fridman, Unite INSERM, Paris, France

(4) がんワクチンの投与後に抗CTLA-4抗体を投与すると明瞭ながん縮小
効果がある

 T細胞表面のCTLA-4分子が標的がん細胞のB-7分子と結合したとき、活性
化を抑えるネガティブシグナルがT細胞内に発信されますが、抗CTLA-4抗
体(= ipilimumab)は、この結合を阻害することによって、抗原とT細胞
レセプターの結合を通じたT細胞の活性化状態を維持します。

 Dana-Farber Cancer InstituteのDranoffは、GM-CSF geneを仕込んだ
X線照射がん細胞ワクチンGVAX投与後に抗CTLA-4抗体を投与すると、大部
分の症例で明瞭ながん縮小効果があることを、ステージIVのメラノーマ
で提示しています(Ref. 1)。

 彼らは、すでに670例に実施しており、2009年にはsurvivalデータが出
る予定とのことです。

 一方、昨日(4月30日)のBiotechnology Japanのニュース欄
<http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2008043054830>
に、米Medarex社と米Bristol-Myers Squibb社が、抗CTLA-4抗体薬剤
「ipilimumab」の生物製剤認可申請(BLA)を09年以降に延期することに
したと出ています。

 この発表は、FDAとの協議の結果、2009年に出る見込みのsurvivalデー
タを待つことにしたものによると思われます。

 従来、メラノーマでは、NCIのRosenbergのグループの全身リンパ球置
換法を除いて、各種のがんワクチンではほとんどobjective responseが
出ていなかっただけに、もしFDAが来年、「GVAX+抗CTLA-4抗体」治療を
認可すると、この影響は非常に大きいと思われます。

 ただし、抗CTLA-4抗体を血中に投与すると強い副作用が出ます。特に
問題になりそうなのが、自己免疫疾患様症状の多発で、これをコントロ
ールできるかが、次の課題となるでしょう。

 (注:当社の自家がんワクチンは、これまで既に700例を越える投与経
験がありますが、単独投与では、自己免疫疾患様症状を示した報告は1例
もありません。)

REFERENCE

1. #SY03-04 Balancing tumor immunity and inflammatory pathology. Glenn Dranoff. Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA.

  No.
130

  08.04.30
米国癌学会2008のトピックスから -その1-
     

   今年の4月12-16日に、サンディエゴで開催された米国癌学会(AACR2008)で出ていた話題から、がん免疫療法関係についてお届けしま す。

(1) がん組織中にメモリーT細胞が蓄積している患者ほど長生きしている

 これは、日本の奈良医科大からの報告です。胃がんについてもポスタ
ー発表していましたが、食道がんでは、がん組織中にCD45RO+hiのリンパ
球が蓄積している症例では、CD45RO+loの症例に比べ、1年生存率が
86.7% vs 70%、3年生存率が 64.8% vs 30.8%、5年生存率 54.1% vs 30.8%
で P=0.036 となったとのことです。

 がん組織中に細胞性免疫反応の形跡があるほうが経過が良い、という
この結果は、ドクター通信 from セルメディシン No. 75でお伝えしま
した「大腸がん-病理診断よりも免疫細胞集積の方が予後を占う」
(Ref.3)という点と趣旨は同じです。

REFERENCES

1.ポスター#262 Prognostic significance of CD45RO+ memory T cell in human gastric cancer. Kohei Wakatsuki, et al. Nara Medical University, Nara, Japan

2.ポスター#263 Clinical significance of CD45RO+ memory T cell in human esophageal cancer. Koji Enomoto, et al. Nara Medical University, Nara, Japan

3. Galon J et al. (2006) Type, density, and location of immune cells within human colorectal tumors predict clinical outcome. Science 313: 1960?1964

(2) “Cancer Immunoediting”には3つのフェーズがある

 弊社からの「セルメディシンニュースNo.32 (2005.4.27)」に2005年の
米国癌学会のトピックスの記事(以下)があり、Immunoeditingについて
述べています。

-------------------------
第2のトピックスは、これまでに盛んに開発されてきたペプチドワクチ
ン療法の問題点が指摘されたことです。特定のがん抗原ペプチドを投与
して、それに反応する抗体やキラー細胞を体内で誘導し、がん細胞を殺
そうという治療法ですが、投与されたがん抗原ペプチドと同じがん抗原
ペプチドを発現しているがん細胞は殺されますが、同じがん抗原ペプチ
ドを発現していないがん細胞は殺されずに野放し状態になり、かえって
良くない結果をもたらす、というものです。

 丁度、同じ現象が乳癌で採用されているハーセプチンという抗体療法
でも起こります。ハーセプチンはHer2/neuという抗原を発現している乳
がん細胞を殺しますが、同じ乳がん細胞群のなかに、Her2/neu抗原を発
現していない細胞がいると、結果的にその乳がん細胞を放置し育ててし
まうことになります。これが、約半年程度しかハーセプチンが効かない
といわれる理由だそうです。

 これらの現象には、Immunoediting(免疫編集)という用語が当てられ
ました。
-------------------------

 今回、R. D. Schreiberが指摘したのは、Immunoeditingには3つのフェ
ーズが考えられるという点です(Ref. 1)。

Elimination - the host-protective phase comparable to cancer immunosurveillance;

Equilibrium - a phase where residual tumor cells circumventing elimination may persist in the host and undergo immunologic sculpting; 

Escape - the phase in which immunity can no longer restrain tumor growth permitting emergence of clinically-apparent, progressively-growing tumors.

 この際、methylcholanthrene (MCA)でがんを発生させるとき、200日以
上も発ガンしていない“tumor free mice” を選び、adaptive and/or
innate immunity担当細胞を抗体等で除去しますと、一挙に約半数のマウ
スが発ガンすること、しかも、これらキラー細胞を戻すとがん増殖が制
御できることから、equilibriumフェーズの存在を証明しています。

 つまり、equilibriumフェーズにいるがんはまだ免疫的に感受性がある
のですが、tumor cells that spontaneously advanced from equilibrium
to escape showed attenuated immunogenicity と述べています。

 この新学説は、通常はがん免疫反応が働いており、最終的に変異する
前(Editing of tumor cells occurs at the interface of the
equilibrium and escape phases.)までなら、がん免疫反応の強化でが
ん組織形成はコントロールできる可能性を示していますが、末期で急速
にがん組織が大きくなるescapeフェーズでは、大部分のがん細胞が低抗
原性に変異しており免疫反応ではもはや治療できないことを示唆してい
ます。

 当社の場合、これまで“スローな癌こそワクチンで”、“余命3ヶ月
以下では自家がんワクチン療法では無理”と言ってきましたが、おおま
かには「escapeフェーズに入る前にワクチン療法をすべきだ」というこ
とに当てはまりそうです。

REFERENCE

1.#SY03-01 Cancer immunoediting: Immunologic control and sculpting of developing tumors. Robert D. Schreiber. Washington Univ. School of Medicine, St. Louis, MO.

  No.
129

  08.04.11
乳がん:腋窩リンパ節転移が陰性でも20年後の予後に影響
     

  今週発行のJ Clin Oncolに出た論文(Ref.1)では、浸潤性の乳がん
で、1976-78年に手術を受け、摘出腋窩リンパ節転移が陰性と判断され
た368症例の腋窩リンパ節ブロックを、現在のセンチネルリンパ節の検
査手法で精密に再検査したところ、実は23%で陽性であり、20年後の現
在のdisease-free survival、disease-specific deathと相関関係があ
ったと報告されています。

 非常に見つけにくい微小転移も予後に大きく関係する(腋窩リンパ節
転移が陰性でも安心できない)となれば、乳がんの場合、術後の補助療
法はやはり大きな意味があると言えます。

 抗がん剤による術後補助療法の他に、問題となる副作用がない「自家
がんワクチン療法」も、十分検討に値すると思われます。

REFERENCE

1. Lee K. Tan, Dilip Giri, Amanda J. Hummer, Katherine S. Panageas, Edi Brogi, Larry Norton, Clifford Hudis, Patrick I. Borgen, Hiram S. Cody, III:Occult Axillary Node Metastases in Breast Cancer Are Prognostically Significant: Results in 368 Node-Negative Patients With 20-Year Follow-Up. J Clin Oncol, 26, No 11 (April 10), 1803-1809, 2008.

  No.
128

08.04.02
自家がんワクチン関係の学会発表があります

  京都府立医大消化器内科・古倉聡先生のグループから、以下の自家が
んワクチン関係の学会発表が行われます。ご注目いただければ幸いです。

 1)第94回日本消化器病学会総会、2008年5月8−10日、福岡国際会議場
  パネルディスカッション8  「肝癌再発進展阻止を目指して」
   古倉 聡、吉川敏一、武田隆久

肝癌の再発予防あるいは進展阻止を目的とした自家がんワクチン療法

 2)10th International Congress on Hyperthermic Oncology (ICHO)
    第10回国際ハイパーサーミア腫瘍学会、2008年4月9−12日、ドイツ、ミュンヘン市、ミュンヘン大学
   Satoshi Kokura, Tetsuya Okayama, Satoko Adachi, Tomohisa Takagi, Osamu Handa, Yuji Naito, Toshikazu Yoshikawa

Autologous Hsp70-rich tumor vaccine

 3)Digestive Disease Week、2008年5月17-22、米国、サンディエゴ、San Diego Convention Center
   Satoshi Kokura, Tetsuya Okayama, Satoko Adachi, Tomohisa Takagi, Osamu Handa, Yuji Naito, Toshikazu Yoshikawa

Efficacy of autologous Hsp70-rich tumor vaccine

 この他に、自家がんワクチン関連で学会発表を予定されている先生方がおられれば、どうか弊社までご連絡願います。この場のニュースとして、他の先生方にもご案内いたしたく存じます。

  No.
127

  08.03.26
「なくすべきは患者間格差」--がん難民についての意見記事
     

  3月7日付けの朝日新聞の朝刊に、銀座並木通りクリニック院長・三好立先生の「がん難民」に関する意見記事が掲載されました。その骨子は、
---------------------
  従来、メディアで取り上げられる「がん難民」とは、がんの「標準治
療」を受けられないために病院を渡り歩く患者の方々を意味していたが、
標準治療は日本全国に広がっており、もはやこの定義はあてはまらなく
なっている。
  いまや、真の「がん難民」とは標準治療では治癒不可能な5割の患者
であって、それに必要なのは一律の治療ではなく、個々の事情、価値観、
人生観に応じたオーダーメードの治療やケアである。
---------------------
となっています。

 詳しくは以下に転載されていますので、ぜひご覧下さい。
→ http://www.ginzanamiki-clinic.com/images/siten.pdf

 また、“がん免疫療法”について、患者様の目線にたった三好先生による非常にわかりやすい解説もご覧いただければ幸いです。
→ http://www.ginzanamiki-clinic.com/column/meneki.html

  No.
126

  08.03.17
Google Healthの衝撃
     

 日経メディカルオンラインで3月5日のニュースに、“Google、Webで医療情報を管理できる「Google Health」の詳細を発表”という記事がでています。

→ http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/it/news/200803/505697.html

 これは、いわゆる“ネットのあちら側”(梅田 望夫 著:ウェブ進化論-本当の大変化はこれから始まる、ちくま新書)に、患者自身が自分の医療情報を(もちろんカルテ、処方履歴、検査結果といったデータの電子コピーも含めて)保存管理しようというシステムです。

 患者は、ネット環境さえあれば、いつでもどこでも自分の詳細な医療情報にアクセスできるようになります。

 となれば、将来は、患者はいつでもどこでも気軽に(たとえ主治医が詳細医療情報を出したくないと思っていてもおかまいなく)、医療機関を変更できることになり、「患者流動性」が非常に高まっていくことと思われます。

 カルテの電子化を医療情報革命の波頭とすると、「Google Health」のような“ネットのあちら側”における莫大な医療情報蓄積は、長い目でみれば、津波のような衝撃をもたらすと思われます。

  No.
125

  08.03.10
大豆イソフラボンと乳がん発生リスク
     

 3月3日にJ. Clin. Oncol.に発表された論文(Ref. 1)によれば、血中イソフラボンのうちgenisteinのレベルが高い日本人女性は、低い女性よりも、乳がんにかかるリスクが1/3になるそうです。

これは国立がんセンターの疫学グループが、40-69才の女性24,226人を対象に10.6年間にわたる追跡調査をした結果ですが、この間に乳がんの発症例が144例あり、それに対するnested case-control(各症例に対し2例のmatched controlsをピックアップした)と比較しています。

しかし、同じ血中イソフラボンのうち、daidzeinのレベルをみるとこのような相関関係はないとのことです。

イソフラボンは大豆に多く含まれるため、豆腐、味噌、醤油を多くとる日本人の日常の食生活では、29.5mg/日の量を摂取するとされていますので、女性はこの恩恵を受けていると推察されます。

しかし一方で、大豆イソフラボンのサプリメントなどによる過剰摂取は、かえって健康被害をもたらすという警告が出ています。

→ http://www.nikkeibp.co.jp/archives/421/421862.html

何事につけ、ほどほどがよろしいようですね。

  No.
124

08.03.07
肝細胞特異性の高い新規MRI造影剤

 2月22日の日経メディカルの「癌Experts」に、「肝細胞癌スクリーニングに新たなMRI造影剤登場--血流と肝機能の両面から評価」とのニュースが掲載されています。

→ http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200802/505562.html

 これは、MRI用造影剤の「マグネビスト」にエトキシベンジル基を導入して肝細胞への特異性を持たせた(したがって正常の肝細胞機能を失った肝癌細胞ではネガティブな特異性を示す)「プリモビスト」の紹介記事です。

 造影剤によるダイナミックMRIはダイナミックCTに比べて感度が高く、しかもMRIには放射線被曝がないという特徴があります。

 現在、特定の正常細胞特異性の高いMRI造影剤の開発競争が熾烈になっていると思われますが、MRIが汎用されている脳腫瘍・肝癌以外にも、今後は、その薬剤を集積しないというネガティブな特異性を持つ各種のがん細胞を高感度で検出できるMRI画像診断法が登場してくると思われます。

No.
123

  08.02.25
外科の立場からがんワクチンを評価
       
外科では権威あるBr. J. Surgeryの2007年12月号に、「Cancer Vaccines」に関する短い評論がスェーデンのカロリンスカ研究所から出 されています(Ref. 1)。

 まだ証明されていない点も含めて大胆に概括した見方を提示していますが、どのがんワクチンも大きな残存がん組織を目に見えるほどはっきりと縮小させる効果はないものの、延命効果とQOLの改善効果が見られると評価しており、抗がん剤との併用効果についても(Ref.2)を引用して触れています。

 世界では、外科でもがんワクチンについて前向きに検討する時代に入ったと感じられます。

REFERENCES
1. Kiessling R, Choudhury A. Cancer vaccines. Br. J. Surgery, 94, 1449-1450, 2007.

2. Schlom J, Arlen PM, Gulley JL. Cancer vaccines: moving beyond current paradigms. Clin Cancer Res. 13, 3776-82, 2007.

No.
122

  08.02.14
マルチターゲット型分子標的薬sunitinibの副作用とWikipediaの情報
        Sunitinib(商品名スーテント)は、各種のレセプターチロジンキナーゼの活性阻害をするマルチターゲット型の分子標的薬で、腫瘍血管造成も阻害するため、既に米国では、腎癌(RCC)とグリベック(imatinib)抵抗性の消化管間質腫瘍(GIST)の治療用に2006年1月26日に認可されています。

 しかし、昨日発信のASCOからのニュースで、sunitinibは15%の腎癌症例で心不全を発生させる副作用があると警告されました(同日発信のロイター通信にも出ています)。

 一方、Wikipediaはインターネット上の巨大な百科事典で、sunitinibの項を見ると(日本時間で2月14日9:30)、その中のsafetyのサブ項目中で既に“Sutent has also been shown to damage heart cells.[9]”との警告が記載されています。

→ http://en.wikipedia.org/wiki/Sunitinib#Mechanism_of_action

 筆者が驚いたのは、このRef.[9]は2月13日発信のロイター通信を引用しており、ASCOのGenitourinary Cancers Symposiumでその日に発表されたばかりの内容でした。

 Wikipediaは、世界中から誰でも書き込みが可能なため、信頼性に欠けるところがあるとされていましたが、実は誰でも更新が可能なゆえに、間違いや新規情報があると速やかに修正更新されるという特徴があり、速報性と情報量の多さにおいては、もはや紙ベースの辞典の比ではありません。

 今回の事例をみても、分子標的薬に関係する研究者がその日のうちにWikipediaのsunitinibの項目を更新したとしか思えません。科学の世界でもWikipediaから目が離せなくなったと思われます。

No.
121

  08.02.12
T細胞の細胞内分化決定因子
        T細胞は、骨髄造血幹細胞が胸腺に移動して分化して作られてきますが、胸腺内では未熟なダブルネガティブ胸腺細胞(CD3-CD4-CD8-)から未熟なダブルポジティブ前駆細胞(D3+CD4+CD8+)を経てヘルパー型(CD3+CD4+CD8-)かキラー型(CD3+CD4-CD8+)のT細胞に分化します。

 このヘルパー型とキラー型への分かれ道は、細胞内ではどんな分子によって制御されているかが不明でしたが、このほど、理化学研究所・アレルギー科学総合研究センターの免疫転写制御研究チームが、遺伝子組み換えマウス実験で、前駆細胞をヘルパーT細胞へ分化させる働きをする
Th-POK遺伝子(ヘルパーT細胞分化のマスター転写因子を作る遺伝子)に、Runxという転写因子が結合して、Th-POK遺伝子の発現を抑制しキラーT細胞に誘導しているためだということを発見しました(Ref. 1)。

 RunxはT細胞でのIL-4産生を抑制している転写因子でもあり、少なくとも3種類あることが知られています。また、“Runx1は主に造血幹細胞に発現し、急性骨髄性白血病の原因遺伝子の1つとして、一方Runx2は骨芽細胞に発現し鎖骨頭蓋異形成症との関連において、またRunx3は消化管粘膜上皮細胞に発現し、胃ガンの抑制遺伝子として、遺伝子の異常と疾患との関連が報告されており、Runxファミリー転写因子は、細胞の発生・分化過程において極めて重要な役割を持つと考えられている”(Ref. 2)とされています。

 今後、急速に転写因子の発現を修飾する化合物(すなわち免疫調節用の新薬候補)の探索が進むものと推測されます。

REFERENCES

1.Ruka Setoguchi, Masashi Tachibana, Yoshinori Naoe, Sawako Muroi, Kaori Akiyama, Chieko Tezuka, Tsukasa Okuda, and Ichiro Taniuchi:
Repression of the Transcription Factor Th-POK by Runx Complexes in Cytotoxic T Cell Development. Science, Feb 2008; 319: 822 - 825.
  解説 → http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080208_2/detail.html

2.西村 美香:転写因子Runx3の末梢神経発生における機能解析、つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2006) 5: TJB200601200200767
  出典 → http://www.biol.tsukuba.ac.jp/tjb/Vol5No1/TJB200601200200767.html

No.
120

  08.02.08
大腸がんの術後化学療法でかかる費用
        日々の診療中によく聞かれるかもしれませんが、化学療法の費用はどのくらいかは意外に気にされていないかもしれません。しかも治癒切除 後の補助療法段階では安価なのではないかと漠然と考えられているかと 思います。

 このほど、ステージV症例で、治癒切除後、再発抑制を目的とした場合の治療として、「5−FU+ロイコボリン(点滴静注)」を基本とした場合、半年間の標準的総薬剤費は60万円になるとのことです。保険が効いて患者負担はこの3割とはいえ、1年間なら36万円です。

 また、「UFT+ロイコボリン」に変更した場合は半年間で118万円(患者負担は35.4万円、年間なら70.8万円)、さらにCapecitabineに変更した場合は半年間で54万円(患者負担は16.2万円、年間なら32.4万円)だそうですが、Capecitabineの場合は、特徴的な副作用があり、致命的ではないものの、手足の痛みによる手仕事困難・歩行困難によりQOL低下や就労に差し支える場合があるという手足症候群が知られています。

 術後の補助的治療という限定的な目的とはいえ、化学療法も相当の費用にのぼり、頻回の通院や副作用もあわせて考えると、医療経済的にも患者様にとっては決して楽なものではないと思われます。

No.
119

  08.01.29
重複がんの割合
       弊社の「自家がんワクチン療法」においても、ときたま重複がんの方から、どちらのがん組織をワクチン作製の材料に使えば良いかと質問を受けることがあります。

 これが、患者様自身が重複がんだとしていることが多い転移性がんの場合であれば、原則として転移先のがん組織を優先とし(なるべく新しいがん細胞群を抗原材料として使いたいがために)、それが量的に不足している場合には原発がん部位を追加混合して自家がんワクチンを作製しているのが現状です。

 しかし、真に同時性(あるいは異時性であっても真に異なる)重複がんの場合は、おそらくがん細胞中のがん抗原が全く異なるだろうと推定されますので、それぞれのがん種ごとに自家がんワクチンを調製しなくてはなりません。

 はたして重複がんの割合はどのくらいあるのか、興味ある課題でしたが、本邦では大規模調査データがあまりないのが現状でした。

 このたび、福岡市で開催された第68回大腸癌研究会で、大腸癌5358例中、同時性胃癌が87例(1.6%)、その他のがんも合わせて同時性がんは188例(3.5%)見つかったという報告がありました(Ref. 1)。

 演者らは、大腸癌術前に胃癌のスクリーニングを行うことは妥当だと推奨していますので(一般検診における胃癌発見率0.14%よりも高いため)、今後、何かのがんが発見された場合、他のがん発生がないかという検査がますます高度化・複雑化していき、高額の経費がかかることになるだろうと予想されます。

REFERENCE

1.石黒めぐみ、他、大腸癌切除症例における重複がん発生状況とサーベイランスの必要性、第68回大腸癌研究会、演題番号:O-35、2008.1.25、福岡

No.
118

  08.01.22
(1) インドアでの日焼けは発ガンの危険性を高める
     

 インドアの日焼け施設(日焼けサロン)を利用して褐色の肌を誇示するというファッションが毎年夏の始まる前に若者の間で流行りますが、これは、35歳以下では皮膚がん発生のリスクを98%に高めるという報道が出ました。

→ http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/SYD1267.htm

 たった一度の日焼け施設利用でもこのリスクは22%となるそうですので(Queensland Institute of Medical Research)、オーストラリアでは特に問題になりそうです。

     
     
(2) 皆のためのデータ取得優先か vs. 個々人の治療優先か:米最高裁、判断を回避
       
1月8日発信のドクター通信 from セルメディシン No. 117で本件の話題を提供しましたが、米最高裁は1月14日、標記の点について判決を出さないという決定をしたとのことです。ということは間接的に控訴審の結果(現在のFDAのやり方:皆のためのデータ取得を優先し、承認までの長い長い道のりを待つべし)を支持したことになります。命つきるまでに待てないがん患者にとっては厳しいものとなりました。

 原記事がこちらに出ています。 → http://news.yahoo.com/s/ap/scotus_experimental_drugs

REFERENCE

1. B. L. ベンダリー、「治験薬と患者の権利」、日経サイエンス2008年2月号、pp. 60-68.

  No.
117

  08.01.08
皆のためのデータ vs. 個々人の治療
     
治療困難な疾病の場合、新しい薬(少なくともその候補)があれば、誰しも試してみたいと考えると思います。しかもその疾病がガンとなれば、患者側の持ち時間が少ないだけに、待てない患者のための未承認薬の取り扱いは微妙な問題をはらみます。

 米国では「医師が推奨する実験的薬剤を使えば命が助かる可能性があったにもかかわらず、政府の規制によってその薬を入手できなかった。このことは憲法で保障されている生存権を侵害するものだ」と主張する患者側が、FDAを相手に訴訟を起こしています(Ref. 1)。

 「治験薬と患者の権利」と題するこの記事では、「皆のためのデータ取得」を優先すべきなのか(つまり、承認までの長い長い道のりを待てというのか)、それとも「個々人の治療」を優先すべきなのか(待ちきれない患者のために治験完了前の使用を容認すべきなのか)の点について、よく争点が整理されています。

 これに対する米国最高裁の判断がこれから出されると思いますが、医学・医療分野でこれまでで最も重要な判決の一つとなるかもしれないと考えられています。

REFERENCE

1. B. L. ベンダリー、「治験薬と患者の権利」、日経サイエンス2008年2月号、pp. 60-68.

  No.
臨時

  08.01.14
がん治療法:昨年の主要な進歩
     

 ASCO(米国臨床腫瘍学会)はがん専門医が集う世界最大の学会で、昨年シカゴで開催されたときには、約3万人が参加したそうです。

 このたび、会員向けにASCOから発行された“Clinical Cancer Advances 2007”に、がん治療分野であった2007年の主要な進歩の要約 が発表されました(J Clin Oncol 26(2),別冊, 2008.)。以下をご覧下さい。

<再発予防とスクリーニング>
 
 ●乳がんのスクリーニングのためのMRI(核磁気共鳴画像)検査

 昨年、米国がん協会(American Cancer Society)から初めてMRI検査のためのガイドラインが発行された。20%以上の乳がん発生リスクをかかえるハイリスクグループの検診に有用である。片方の乳房にがんがある場合、マンモグラフィーで見逃された他方の乳房のがん発見に役立つ。また、非浸潤性で前がん状態の検出が可能である。

 しかし、一般人の乳がん検診向けには、MRI検査はコスト高、標準化が未完、擬陽性が多いことから、未だ推奨されておらず、現在はマンモグラフィーがベストという状況にある。

 ●ヒトパピローマウイルス感染と頭・頸部がんとのリンク

 ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸部癌で検出されるが、頭・頸部癌でも癌に関与しているという報告が2つあり、HPVワクチンが発生予防に役立ちそうである。

 1つは喫煙と飲酒に関係なく、口腔癌の72%に、子宮頸癌に関与するHPVが発見されたというもの。もう1つはHPV(+)の患者はHPV(-)の患者よりも予後が良かったというもので、ウイルスを持つ患者は、癌の進行と死亡のリスクが低くなっていると推定される。

 すなわち、HPV感染により発ガンしている可能性があるが、同時にHPVに対する免疫反応が予後に関係している可能性が考えられる。

 ●ホルモン置換療法の減少による乳がん発生率の減少

 閉経後にエストロジェンとプロゲステロンを投与するホルモン置換療法は乳がん発生リスクを高めるが、2002年以降にホルモン置換療法が減少するにつれ、乳がん発生率も有意に下がっている。

 ●予防的放射線照射による小細胞肺癌患者生存率の改善

 小細胞肺癌は脳転移しやすいが、予防的な頭部へのRTで脳転移リスクを2/3に減少させ、生存期間を延ばすことができた。

 
<難治性がんの治療>

 ●新規分子標的薬(Sorafenib)が肝がんに延命効果

 大規模臨床試験で、肝細胞がんでは、ソラフェニブ(Nexavar)により44%の患者が延命した。現在、ソラフェニブは米国ではすでに認可されている。

 ●アバスチンが進行性腎がんに改善効果

 初期治療で、インターフェロン-α2aに加え、ベバシズマブ(bevacizumab、アバスチン)を加えると腎癌の無増悪生存率が改善され、約2倍になった(5.4ヶ月から10.2ヶ月になった)。ベバシズマブは、米国では転移性直腸結腸癌、非小細胞肺癌の治療において認可されている。

 歴史的には腎細胞癌は難治性で、これまでの方法ではわずかな治療効果しかなかったが、ここ2年で、3つの標的治療薬が登場、延命・無増悪生存期間を改善し、FDAの認可を受けている。ソラフェニブ、スニチニブ(Sutebt)、テムシロリムス(Torisel)である。

 将来的なトライアルとして、ベバシズマブとこれらの薬との併用や、新しい治療法との組み合わせが期待される。

     
       Dr.通信 from セルメディシン 2009年分  → こちらです
                  (No.163 09.01.05 から No.179 09.05.26 までは重複しています)
 2007年およびそれ以前の分について、購読をご希望の方は → メールで申し込み をどうぞ。